ダブル不倫(W不倫)とは?本気でも遊びでも辛い代償を弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

ダブル不倫とは、不倫関係が重なっているケースのことをいいます。

ダブル不倫は、日本では犯罪行為ではありません。

しかし、民法上、不法行為が成立し、また、離婚の理由などにもなり得る行為です。

わかりやすく言うと、刑務所に入る必要はありませんが、様々な代償を伴う可能性がある危険な行為です。

多くの方がその危険性について、熟知されておりません。

ここでは、離婚の問い合わせ件数累計1万件以上の法律事務所の弁護士が、ダブル不倫についての正しい知識をお伝えいたします。

不倫問題でお悩みの方は、ぜひご参考にされてください。

ダブル不倫とは

ダブル不倫とは、不倫関係が重なっているケースのことをいいます。

ダブル不倫は、法律上の言葉ではなく俗語です。

しかし、きちんと定義づけしないと誤解が生じるため、ここではダブル不倫の意味を明確にした上で、リスク等について解説いたします。

なお、ダブル不倫について、きちんと定義づけされずに、根拠もなく解説されているWEBサイトが散見されるため、他のWEBサイトを見られる際には、情報の正確性に気をつけるようにされてください。

ダブル不倫には2つのタイプがある

①不倫関係が1つのパターン

例えば、B夫さんとB妻さんご夫婦のうち、B夫さんがA妻さんという女性と不倫を行ったとします。

このとき、A妻さんが既婚者でA夫さんが夫だったとします。

この場合、不倫関係は、B夫さんとA妻さんの一つだけであり、重なっておりません。

もっとも、不倫の被害者としては、B妻さんとA夫さんの二人がいます。

このような不倫の被害者の人数に着目して、ダブル不倫と呼ぶ場合があります。

なお、このパターンは、通常の不倫の事例と法的な問題点は大きく異なりません

 

②不倫関係が2つのパターン

例えば、A妻さんとA夫さんご夫婦のうち、A夫さんがB子さんという女性と不倫を行ったとします。

そして、A妻さんもC男さんという男性と不倫を行っている場合、不倫関係が重なっています。

この場合、夫婦双方が他者と不倫をしており、不倫関係が2重に発生しています

このタイプのダブル不倫については、通常の不倫と法的な問題点が異なってくるため注意が必要です。

 

 

ダブル不倫のきっかけ

ある資料によると、出会いのきっかけで最も多いのは、多くの年代で「同じ会社」、次いで「友人」となっています

出会いのきっかけに関するグラフ

参考:相模ゴム工業株式会社

上記資料は通常の不倫とダブル不倫とを区別していませんが、出会いのきっかけとしては両者でさほど違いはないと考えられます。

 

 

ダブル不倫をする人の心理

なぜ、ダブル不倫を行う人がいるのでしょうか。

ダブル不倫に関わらず、不倫は既婚者が他の異性と性的な関わり合いを持つことです。

日本では不倫は犯罪行為ではありませんが、不貞行為に該当すると民事上、不法行為が成立します(民法709条・710条)。

参考:民法 – e-Gov法令検索

つまり民事上は違法な行為です。

また、「不倫」は決して褒められた行為ではなく、社会的には非難されるケースが多いです。

不倫はこのような性質を持つため、単なる性的な関心のみでなく、「スリル感」や「背徳感」を感じるという心理がはたらいているのかと思われます

特に、不倫関係が1つのパターンでは、不倫相手が既婚者です。

この場合、不倫相手の配偶者が不倫を知れば、不貞行為として慰謝料を請求されるリスクが高いです。

そのため、通常の不倫以上に「スリル感」や「背徳感」という心理が作用していると考えられます。

 

 

ダブル不倫(パターン①)と通常の不倫との違い

不倫関係が1つのパターンの場合、通常の不倫との法的な問題は大きくは変わりません。

異なる点としては、不倫相手が既婚者の場合、慰謝料の請求が複雑化するという点です。

すなわち、本人の配偶者(A夫)は、本人(A妻)と不倫相手(B夫)に対して慰謝料を請求できます。

不倫相手が既婚者の場合、その配偶者(B妻)も同様に、配偶者(B夫)や不倫相手(A妻)に対して慰謝料を請求できます。

このパターンのケースでは、A夫がA妻と離婚せずに夫婦関係を継続する場合、金銭的な面で被害を回復できる可能性はとても低くなります。

なぜならば、A夫がB夫から慰謝料(例:200万円)を受け取っても、B妻もA妻から慰謝料(例:200万円)を請求できるので、家計(夫婦の財布)は一つと考えるとお金の出し入れがあるだけで増加はしません

不倫関係が1つのパターンの場合で相手が既婚者の場合、このように慰謝料の請求が複雑化することがあります。

 

 

ダブル不倫(パターン②)と不倫との3つの違い

ダブル不倫で不倫関係が2つのパターンの場合、通常の不倫と次の3つが異なってきます。

①ダブル不倫では配偶者に慰謝料を請求できない可能性が高い

ダブル不倫の場合、配偶者に対する慰謝料請求が認められない可能性があります。

具体例で説明します。

事例

A妻さんは、A夫と結婚して幸せに暮らしていましたが、先日、A夫がC子と不倫しているのを発見してしまいました。

ショックを受けたA妻さんは、友人のB夫に相談しているうちに、B夫と男女の関係になってしまいました。

そんな中、A夫はA妻さんの不倫を知り、A妻さんに離婚を切り出しました。

A妻さんとしては、離婚するのであればA夫と不倫相手のC子に対し、慰謝料を請求したいと考えています。

A妻さんの慰謝料請求は認められるのでしょうか?

弁護士の回答

慰謝料とは、不法行為の被害者の精神的な苦痛を金銭に換算したものです。

仮に、A妻さんが不倫をしていないのであれば、純粋な被害者として加害者であるA夫とC子に対して慰謝料を請求できます。

また、その金額は通常200万円から300万円程度が多いでしょう。

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しかし、ダブル不倫の場合、夫婦の双方が不法行為の加害者に該当するため、慰謝料が認められる可能性が低いと考えられます。

もっとも、この事例では、先にA夫さんが不倫をしています。

そのため、その内容しだいでは、A夫の方が悪質であるなどとして、慰謝料が認められる場合もあります。

しかし、その金額は通常の不倫と比べて低額になってしまうでしょう。

不倫相手が既婚者の場合の慰謝料請求

上記のケースで、仮に、A妻またはA夫の不倫相手も既婚者だった場合、その配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。

例えば、A妻の不倫相手のB夫が既婚者で、その配偶者がB妻の場合、B妻はA妻に対して、慰謝料を請求できます。

また、その金額は通常の不倫の慰謝料と同程度となるでしょう。

なお、この場合、A夫もB夫に対して、慰謝料を請求したいと考えるかもしれませんが、自分自身が不倫を行っているため、慰謝料請求は難しいでしょう。

 

②ダブル不倫では裁判離婚が認められない可能性がある

上記の事例で、A夫からの離婚請求は認められるのでしょうか。

裁判所が離婚を認めるためには、要件(これを「離婚事由」といいます。)が必要です。

A夫さんからの離婚請求を根拠付ける離婚事由は、民法770条1項1号のX子の「不貞行為」になります。

根拠条文
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
(以下は省略)

引用元:民法|電子政府の窓口

民法で定められている離婚事由があるわけですから、一見、すんなりと離婚できるように思えます。

しかし、この離婚請求においては、A妻から「有責配偶者の抗弁」が主張されるでしょう。

というのも、A夫は、先に不倫を行って、夫婦関係の破綻のきっかけを作っているからです。

「有責配偶者の抗弁」(ゆうせきはいぐうしゃのこうべん)とは、夫婦関係を破綻に導いたことについて責任ある配偶者からの離婚請求は認められないという反論のことです。

そして、このような有責配偶者からの離婚請求の場合、最高裁は次の3つの要件を満たしていなければ離婚は認めないと判示しています。

判例 有責配偶者からの離婚請求の場合の3つの要件

    • 夫婦の別居が両当事者の年齢及び別居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと。
    • 夫婦間に未成熟子が存在しないこと。
    • 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと。

(最判昭62.9.2)

参考:判例|裁判所ホームページ

この要件を満たすことは、通常、難しいです。

したがって、A夫の離婚請求は、裁判では認められない可能性があります。

A妻からの離婚請求

それでは、仮に、A妻から離婚請求を行った場合はどうなるのでしょうか。

A妻が有責配偶者にあたるかが裁判での主たる争点になることが予想できます。

結論からいうと、A妻は、本事例では、有責配偶者とは認められず、離婚請求が認められる可能性は相当程度あると思われます。

というのも、この事例では、先に不倫をしたのはA夫だからです。

A夫が不倫しなければ、A妻はB夫と不倫関係にならなかったでしょうから、婚姻関係を破綻に導いた主たる責任はA夫にあると裁判所は考える可能性があります。

 

③ダブル不倫の場合協議離婚が成立する可能性が高い

協議離婚とは、裁判所を利用せず、夫婦の話し合いで離婚条件を決めて、離婚届けを出すというものです。

通常の不倫の場合、配偶者は被害者です。

被害者の感情として、「一方的に不倫をしておきながらの離婚は許せない」という方が多く、離婚協議は難航します。

しかし、ダブル不倫では、離婚を求める本人だけではなく、相手も不倫を行っています。

そのため、「相手を許せない」という憎悪の感情が通常の不倫の場合よりも少ないケースもあります。

したがって、あくまでもケース・バイ・ケースですが、協議離婚の成立可能性があると考えられます。

以上をまとめると、ダブル不倫と通常の不倫との違いは下表のとおりとなります。

通常の不倫 ダブル不倫
慰謝料 200万円〜300万円 難しい
裁判離婚の可能性 有り 難しい
協議離婚の可能性 難しい 有り

 

 

ダブル不倫の3つのリスク

ダブル不倫には次の3つの大きなリスクがあります。

①夫婦関係が破綻するリスク

貞操観念には、個人によって様々な捉え方があります。

しかし、現在の日本においては、「夫婦は不倫をしない」ということが当然の前提であって、不倫は相手への信頼を失う可能性が極めて高い行為といえます。

これは通常の不倫でも、ダブル不倫の場合でも異ならないでしょう。

人は自分を中心に物事を考える傾向があります。

わかりやすく言うと、「自分の不倫は許せても、相手の不倫は許せない」と考えてしまうおそれがあります。

もちろん、ケース・バイ・ケースですので、「お互い様」と割り切って夫婦関係を継続する方々もいるでしょう。

しかし、そのようなケースはあくまで一部であり、大前提としては、ダブル不倫によって夫婦関係が破綻するリスクが有るということを認識しておくべきです。

 

②子供の健やかな成長を阻害するリスク

夫婦の問題と子供との関係は、一応は切り離すことが可能です。

しかし、成長期にある子どもにとって、両親の存在は極めて大きいです。

「夫婦が愛情をもってお互いに気遣いながら生活している家庭」と、「形骸化した夫婦の家庭」とを比較した場合、後者は子供の情緒不安定の原因になるなどして、成長に悪影響を及ぼすることが懸念されます。

 

③経済的に莫大な損失を被るリスク

ダブル不倫によって夫婦関係が破綻したとき、離婚を選択する方が多いです。

そして、離婚した場合、夫も妻も、経済的に大きな損失を被るでしょう。

以下、それぞれの場合の予想される経済的損失の例を示します。

夫の場合

養育費の支払い

未成熟の子供がいる場合、父母の年収に応じた養育費の支払い義務が生じます。

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財産分与の支払い

結婚して築いてきた預貯金、生命保険、不動産、自動車などの財産を精算して基本的に2分の1を分与することになります。

年金分割について

会社員や公務員などは、基本的に50%を分割することとなります。

婚姻費用について

正式に離婚が成立するまでの生活費の支払い義務が生じます。

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慰謝料について

不倫の相手が既婚者の場合、上記のとおり、その配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。

 

妻の場合

妻の場合も、夫の場合と同様に、財産分与の精算や慰謝料の問題が発生します。

また、妻特有の問題としては、離婚後の生活の不安があげられます。

すなわち、夫の方が収入が多く、妻は扶養してもらう形の世帯が多いです。

離婚すると、夫からお金(生活費)をもらえなくなるため、生活設計を大幅に見直さなければなりません。

未成熟の子供がいる場合、養育費を受け取れますが、通常の場合は離婚前と比べて自由できるお金が減ります。

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また、行政からの公的扶助もありますが、これを合わせても離婚前と比較して生活が苦しくなるでしょう。

収入を増やすために、就職や転職される方が多いのですが、一般的には離婚前よりも収入が減少するケースが多いです。

 

 

ダブル不倫についてのよくあるご質問

ダブル不倫が遊びの場合でも代償は大きい?

例えば、不倫が1回限りの軽い気持ちであった場合、夫婦関係が修復できる可能性はあるでしょう。

しかし、相手しだいです。

1回限りであったとしても、相手が許してくれなければ離婚につながってしまいます。

そして、離婚となれば、上記の経済的な損失が懸念されます。

ダブル不倫の期間が長いと影響も大きい?

長年に渡ってダブル不倫が継続していると、上記の3つのデメリットの影響も大きくなる傾向になります。

すなわち、不倫の期間が長年月であることを相手が知った場合、夫婦の信頼関係はより壊れやすく、修復が難しいと考えられます。

また、子供がいるご家庭では長年月に渡って子供の成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。

さらに、仮に離婚に至った場合の経済的損失も大きくなる傾向にあります。

職場(社内)のダブル不倫の影響とは?

職場内の男女がダブル不倫に発展してしまうケースでは、発覚後、会社から人事上、不利益な処分を受ける可能性があります。

具体的な処分の内容については、ケース・バイ・ケースですので一概には言えませんが、実際の事例で多いと感じるのは、転勤や配転などの人事異動があるケースです。

会社としては、同じ部署に配置しておくわけには行かないという理由で、人事異動を行うのです。

なお、退職勧奨や解雇については、不倫だけの理由ではあまり例がありません。

 

 

まとめ

以上、ダブル不倫の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

ダブル不倫には2つのタイプがあります。

不倫関係が1つのパターンの場合で、不倫相手が既婚者の場合、慰謝料の請求が複雑化する可能性があります。

そして、不倫関係が2つのパターンの場合、通常の不倫と異なる法的な問題があります。

また、ダブル不倫には、夫婦関係の破綻、子供への悪影響、経済的な損失といった3つの大きなデメリットがあります。

これらのデメリットの具体的な内容については、専門的知識と経験をもとに判断する必要があります。

そのため、ダブル不倫の問題については、離婚問題を専門とする弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 

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