不倫の時効とは?弁護士がポイントをわかりやすく解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

不倫の時効は原則として3年です。

夫婦の一方が不倫をした場合、一定の条件を満たせば、不倫をされた方の配偶者は、不倫をした配偶者と不倫相手に対し、慰謝料を請求することができます。

しかし、原則3年以内に請求をしないと、請求ができなくなってしまいます。

この不倫の慰謝料の請求期限のことを不倫の時効といいます。

ここでは、不倫の時効に関して、法律上の規定や、いつまで慰謝料を請求できるのか、期限が迫っている場合はどうすればよいか、などについて解説していきます。

また、不倫の慰謝料に関して気を付けるべきポイントについても、立場別にご紹介していきます。

この記事を最後まで読んでいただくと、次のことを理解していただけます。

この記事でわかること

  • 不倫の慰謝料はいつまで請求できるか
  • 時効期間(不倫の慰謝料の請求期限)を延長する方法
  • 不倫の被害者が気を付けるべきポイント
  • 不倫の加害者が気を付けるべきポイント

 

不倫の時効とは?

不倫の時効とは、不倫の慰謝料を請求できる期限のことです。

ここでは、まず不倫とは何を指すかを明確にした上で、不倫の時効について解説していきます。

 

不倫とは〜浮気・不貞との違い〜

不倫とは、道徳的に許されない男女の関係を指す言葉であり、一般的には既婚者が妻又は夫以外の人と交際関係にあることをいいます。

それに対し、「浮気」は、一般的には既婚・未婚にかかわらずパートナー以外の人と交際関係にあることを指すものと思われます。

また、法律用語である「不貞行為」は、基本的には既婚者が妻又は夫以外の異性と肉体関係(性交渉及び口淫等の性交類似行為)を持つことと解釈されています。

不貞行為と不倫の関係は、不倫をどのように解釈するかにより、次の2通りが考えられます。

①肉体関係を伴う男女関係を不倫という場合 → 不倫=不貞行為
②肉体関係を伴わない関係も不倫に含める場合 → 不貞行為は不倫の一部

いずれと考えるかは、人によって異なると思われますが、ここでは②の考え方を前提とすることにします。

不貞行為・不倫・浮気の相違点
不貞行為 不倫 浮気
当事者 一方又は双方が既婚者(※) 既婚者・独身者問わない
肉体関係 あるものに限る あるもの、ないもの両方含む

(※)「既婚者」には、内縁関係にある者も含むものとします。

慰謝料との関係

慰謝料とは、「不法行為」によって精神的苦痛を被った場合に加害者に対して請求する金銭をいいます。

「不法行為」とは、他人の権利や法的保護に値する利益を侵害する行為のことです。

不貞行為は基本的に不法行為に当たるため、不貞行為があった場合は慰謝料が認められる可能性が高いです。

不倫の範疇には入るけれども不貞行為には当たらない行為(キスをする、抱き合うなど)は、その態様等によっては不法行為に当たるとされ、慰謝料が認められ得ると考えられています。

他方、不倫に当たらない浮気(当事者の双方が独身者である場合)は原則として不法行為に当たらず、慰謝料は認められません。

不法行為について

このように、慰謝料との関係でみると、用語の使い分けよりも、不法行為に当たるか否かが問題になります。

以下では、慰謝料がいつまで請求できるかという問題について解説していきますので、単に「不倫」という場合、基本的には不法行為に当たるもの(慰謝料が認められ得るもの)を指すものとします。

 

不倫の時効

不倫の時効とは、不倫の慰謝料を請求できる期限のことです。

「時効」とは、ある事実状態が一定期間続いたことをもって、その状態についての権利を取得又は喪失する制度のことであり、権利を喪失するものを「消滅時効」といいます。

先に説明したとおり、不倫で慰謝料を請求することができるのは、それが「不法行為」に当たるためです。

法律(民法)では、不法行為に基づく請求権については、次の期間のいずれかが来れば時効によって消滅すると定められています。

  1. ① 損害及び加害者を知った時から3年
  2. ② 不法行為の時から20年

不倫の時効

【根拠条文】

民法(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

引用元:民法|電子政府の窓口

起算点に注意

「起算点」とは、時効の期間のスタート時点のことです。

上記のとおり、「損害及び加害者を知った時」または「不法行為の時」が起算点となりますが、不倫の慰謝料には「損害」と「加害者」の中身がそれぞれ2通りあり、誰に、どのような内容の慰謝料を請求するかによって起算点が異なります。

「損害を知った時」とは(慰謝料の内容により異なる)

不倫の慰謝料における「損害」とは、不倫によって生じた精神的苦痛のことをいいます。

不倫によって生じる精神的苦痛には、次の2種類があると考えられています。

  1. ① 不倫そのものによって生じる精神的苦痛
    →離婚しなくても、不倫行為があれば生じるもの
    (これを対象とした慰謝料は「不貞慰謝料」又は「離婚原因慰謝料」と呼ばれています。)
  2. ② 不倫が原因で離婚せざるを得なくなったことによって生じる精神的苦痛
    →離婚が成立した時にはじめて生じるもの
    (これを対象とした慰謝料は「離婚自体慰謝料」と呼ばれています。

したがって、①と②どちらを慰謝料の対象として請求するかにより、「損害を知った時」の時点が異なります。

①の場合は「不倫があったことを知った時」、②の場合は「離婚が成立した時」となります。

「加害者を知った時」とは(誰に請求するかにより異なる)

不倫の加害者は、不倫行為をした当事者2人、すなわち加害配偶者(不倫をした夫又は妻)と不倫相手となります。

不倫の慰謝料は、いずれか一方のみに請求することもできますし、双方に請求することもできます。

「加害者を知った時」の時点は、加害配偶者に対する請求の場合は「不倫があったことを知った時」と一致します。

他方、不倫相手に対する請求の場合は、「不倫相手を知った時」となります。

「不法行為の時」とは

不倫の慰謝料における「不法行為の時」とは、不倫行為がされた時のことを指します。

継続的に不倫行為が繰り返されている場合は、最後の行為の時が「不法行為の時」に該当すると考えられます。

不倫行為の時から20年が経つと、被害者が不倫の事実や不倫相手を知ろうと知るまいと、不貞慰謝料の請求権は時効によって消滅します。

そのため、例えば不倫行為の時から20年を経過した後に不倫があったことに気がついた場合や、不倫相手が特定できずに20年が過ぎてしまった場合、不貞慰謝料の請求をすることができなくなってしまいます。

これらを踏まえ、状況別に不倫によって生じる慰謝料の時効についてまとめると次のようになります。

状況 離婚しない場合 離婚した場合
発生する慰謝料 不倫そのものによる慰謝料(不貞慰謝料) 不倫が原因で離婚せざるを得なくなったことによる慰謝料(離婚自体慰謝料)
加害配偶者に対する慰謝料請求の時効期間 次のいずれかの期間(早く満了した方)
①不倫があったことを知った時から3年
②不倫行為の時から20年
(※1)
離婚の成立時から3年
不倫相手に対する慰謝料請求の時効期間 次のいずれかの期間(早く満了した方)
①不倫があったこと及び不倫相手を知った時から3年
②不倫行為の時から20年
離婚の成立時から3年(※2)

(※1)ただし、民法159条「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」との規定により、婚姻期間中に①又は②の期間が来るケースでは離婚後6か月後まで時効期間が延長されます。

(※2)ただし、不倫相手に対する離婚自体慰謝料は原則認められません。

参考判例:最高裁判決平成31年2月19日

具体例

■2023年1月1日:夫とAが不倫行為をした
←対夫&対A・不貞慰謝料20年の時効の起算点(①)

■2024年1月1日:妻が夫の不倫行為を知った
←対夫・不貞慰謝料3年の時効の起算点(②)

■2025年1月1日:妻は夫の不倫相手がAであることを知った
←対A・不貞慰謝料3年の時効の起算点(③)

■2026年1月1日:夫の不倫が原因で、妻は夫と離婚した
←対夫・離婚自体慰謝料3年の時効の起算点(④)

時効の起算点に注意

 

浮気の時効

浮気が「不倫」(不法行為)に該当する限りは、「浮気の時効」と「不倫の時効」は呼び方が違うだけで中身は同じです。

なお、先に説明したとおり、独身者同士の浮気は原則不法行為に当たらず、慰謝料を請求することはできないため、時効の問題は生じません。

不貞の時効

不貞は肉体関係を伴うものであり、不法行為と認められる可能性が高くなります。

したがって、「不貞の時効」は、「不倫の時効」のうち慰謝料が認められやすいものを指すといえます。

 

 

不倫の時効は中断がある

不倫の時効期間は、延長することができます。

消滅時効には「完成猶予」「更新」という制度が設けられており、時効期間が過ぎる前に一定の手段を講じることにより、時効の進行や完成を妨げることができるためです。

「完成猶予」とは、一定期間が経過するまでは時効が完成しないとすることです。

「更新」とは、それまでの時効の進行をなかったことにして、新たに進行が始まることです。

時効の進行や完成を妨げる

民法改正との関係

「完成猶予」及び「更新」は、2020年4月から施行されている改正民法で新たに用いられるようになった概念です。

改正前民法では、「停止」「中断」という概念が用いられていました。

2020年4月より前に生じた慰謝料に関しては、改正前の規定が適用されることになりますが、「停止」は「完成猶予」、「中断」は「更新」と同じものと考えて差し支えはありません。

不倫の時効を完成猶予・更新する方法には、主に次のようなものがあります。

効力 方法 内容
猶予 ①催告(150条) 加害者に慰謝料を請求すること(一般的には内容証明郵便を送付して請求する)
→催告の時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しない
※6か月の完成猶予がされている間に再度催告をしても、再度の催告については完成猶予の効力は生じない
②協議を行う旨の合意(151条)
※改正民法で新設
→2020年4月より以前に生じた慰謝料は対象外
加害者と慰謝料について協議する(話し合う)ことを書面(データでも可)で約束すること
→次の期間が経過するまでの間は時効が完成しない
①約束があったときから1年
②1年未満の協議期間を定めたときはその期間
③協議の続行を拒否する旨の書面による通知をした場合はその時から6か月
③裁判上の請求、和解・民事調停・家事調停(147条) 訴訟、調停等の裁判手続きにより慰謝料を請求すること
→手続きが終了するまでの間は時効が完成しない(猶予)
手続きによって慰謝料を請求する権利が確定した場合、確定した権利の時効は、手続終了時から新たに進行が始まる(更新)
※その時効期間は10年となる(169条)
更新 ④承認(152条) 加害者が慰謝料の支払義務を認めること
→支払義務を認めた時から新たに時効の進行が始まる
※加害者が「時効が完成した」と主張しない限りは、時効が完成した後にされた承認でも更新の効力は生じる



上記のうち用いられることが多い手段は、①「催告」又は③「裁判上の請求等」です。

もっとも、①は、一時的に(6月間)時効の完成を阻止するものに過ぎず、手始めに、又は裁判手続き(③)の準備をする時間を確保するためにされることがほとんどであり、最も有効な手段は③といえるでしょう。

②「協議を行う旨の合意」は、不倫の被害者・加害者ともに裁判を望まず穏便に解決したい場合には選択肢になると考えられますが、不倫について争いがある状況などでは書面を取り交わすこと自体難しく、あまり有効ではないと思われます。

④「承認」は、加害者の意思によるため、不倫について争いがある状況などでは、被害者側から働きかけても「承認させる」のが難しいことがほとんどです。

一方、加害者が承認した上で慰謝料の減額を交渉してくるケースなどもあります。

そのような場合は、承認した旨についてきちんと書面に残しておくことが重要になります。

以下、①と③により時効の完成猶予・更新する手段について具体例を見ていきましょう。

具体例 妻が夫と不倫したAに対し、不貞慰謝料を請求する場合

■ 2023年1月1日:夫とAが不倫した

■ 2024年1月1日:妻が不倫があったこと及び不倫相手がAであることを知った

(この間、妻がAに請求等をしたことはない)

■ 現在、2026年12月1日である

この場合、妻が何もしないまま2027年1月1日を迎えると、時効が完成し、慰謝料を請求する権利は時効によって消滅してしまいます。


そのため、妻は、次のような手段を講じました。

  • 2026年12月1日:妻がAに内容証明郵便(※)で不貞慰謝料を請求した(催告)
    →2027年5月1日まで時効の完成が猶予される

    (Aからは何の返答もなかった)
  • 2027年3月1日:妻がAに対し、不貞慰謝料を請求する裁判(訴訟)を起こした
    →裁判が終わるまでの期間は時効の完成が猶予される

  • 2028年3月1日:裁判で妻のAに対する不貞慰謝料を請求する権利が確定した
    →確定した権利について、裁判の終了時から新たに時効の進行が始まる(更新)
    (裁判で確定した権利であるため、新たな時効期間は10年となる)

(※)内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に差し出したか」ということを、郵便局が証明してくれるものです。これにより、いつ催告をしたかを明確にすることができます。

時効の完成猶予・更新する手段の具体例

【根拠条文】

民法(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 (省略)

(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

引用元:民法|電子政府の窓口

完成猶予・更新の効力は人ごとに生じる

時効の完成猶予・更新の効力は人ごとに生じます。

例えば、加害配偶者に対し、裁判を起こして慰謝料の時効の完成を猶予したとしても、それに伴い不倫相手に対する慰謝料の時効の完成も猶予されるわけではないので注意が必要です。

不倫相手に対する慰謝料についても時効の完成を猶予するためには、別途、不倫相手に対しても裁判を起こすなどの手段を講じる必要があります。

 

 

不倫の被害者が気をつけるべき4つのポイント

不倫の被害者が気をつけるべき4つのポイント

POINT① できるだけ早く請求する

不倫の慰謝料には請求期限があります。

請求期限は短いものだと3年であり、意外とすぐに過ぎ去ってしまうものともいえます。

不倫を知ってすぐに冷静に対応することは通常難しいですが、なるべく早く請求に動き出すことが大切です。

もっとも、ご自身で状況を整理したり、証拠を集めたり、誰に何を請求すればよいのか検討したりすることは非常に難しく、それに時間を費やしてしまうこともあります。

そのため、不倫が発覚した場合、まずは専門の弁護士に相談し、請求に向けて何をどのように進めて行けばよいのかアドバイスをもらうとよいでしょう。

POINT② 不倫の証拠を押さえる

不倫で慰謝料を請求する際には、不倫の証拠を押さえることが非常に重要です。

不倫の事実があったとしても、それを裏付ける十分な証拠がなく、相手も不倫の事実を否定している場合は、裁判で慰謝料を認めてもらうことが非常に困難になります。

反対に、十分な証拠が揃っている場合は、加害者も言い逃れができなくなり、こちらが裁判を起こす前に不倫を認めて慰謝料の支払いに応じてくる可能性が高くなります。

このように、早期解決によって時効が完成してしまうことを防止できるのは勿論、裁判をする時間や費用等の負担の軽減にもつながります。

収集するべき証拠や、収集方法、収集の際の注意点などは、具体的なケースによって異なります。

そのため、具体的には不倫問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

POINT③ 不貞相手への請求を忘れない

先に解説したとおり、不貞慰謝料は、加害配偶者のみでなく不倫相手に対しても請求することができます。

加害配偶者に慰謝料を支払うだけの収入や貯金がない場合でも、不倫相手からは慰謝料を回収することができる場合があるため、不倫相手に対する請求を忘れないことがポイントです。

また、上で解説したとおり、配偶者に対しては離婚後に離婚慰謝料を請求できる可能性が高いのに対し、不倫相手に対しては不貞行為と相手のことを知ってから3年間しか請求できない可能性が高いです。

離婚するか迷っている間に、3年が経過し、結局離婚することになった場合、不倫相手には慰謝料を請求できないリスクがあるため注意してください。

不倫の当事者2人が共同で全額の支払義務を負っている

不貞慰謝料は、不倫の当事者2人が共同でその全額について、支払義務を負うと考えられています。

そのため、不倫の加害者の一方にのみ請求をするのでは十分な慰謝料を回収できない場合、他方にも請求を出すことにより、回収可能性が高くなるといえます。

例えば、妻とAが不倫し、その慰謝料の全体が300万円という場合、夫との関係では妻とAがいくらずつ支払わなければいけないという分担割合はなく、妻とAが合わせて300万円の支払義務を負っていることになります。

このとき、妻に収入も貯金もない場合、妻にのみ請求するのでは慰謝料を全部回収することは困難ですが、Aにも請求をすることにより、Aに資力がある限りは300万円全部を回収できる可能性があるといえます。

加害配偶者と離婚しない場合は求償に注意

不貞慰謝料は、被害者との間では加害者2人の分担割合はありませんが、加害者2人の間では、不倫についての責任度合い(どちらが主導したかなど)に応じて分担されることになります。

そのため、加害者の一方が自分の分担額以上を支払った場合、他方の分担額を立替えている形になるため、他方に対し分担金の清算を求めることができます(これを「求償」といいます。)。

そうすると、例えば、上記の例で、夫は妻と離婚するつもりがなかったので敢えてAだけに300万円全部を請求し、支払ってもらったとしても、後でAから妻へ求償が来てしまう可能性があることになります。

加害配偶者と離婚しない場合は求償に注意

このような事態を防ぐため、夫がAとの交渉により、妻に求償しない約束をさせておくケースなどもありますが、高度な専門技術が必要になるので、詳しくは専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

POINT④ 離婚問題に詳しい弁護士へ相談する

時効の制度は、起算点、いつ完成するか、延長する手段は何か、延長した結果いつ完成するかなど、複雑で難しいものといえます。

具体的な事案において、それらを正確に把握し、適切な対応をしていくことは、専門家でないと困難です。

不倫が発覚して間もないという方はもちろん、不倫が発覚してから時間が経っているという方も諦めず、まずは専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

不倫の問題は、時効の他にも、請求金額の検討や、証拠の収集、解決方法など、専門知識・技術がなければ難しい事柄が多いです。

また、不倫が原因で離婚に至った場合は、慰謝料のみでなく、離婚問題として全体的に解決する必要もあります。

そのため、離婚問題に詳しい弁護士のサポートを受けて進めることをおすすめします。

 

 

不倫の加害者が気をつけるべき3つのポイント

不倫の加害者が気をつけるべき3つのポイント

POINT① 時効は援用が必要

不倫の慰謝料を請求できる権利は、時効の完成により消滅しますが、消滅の効果を享受するためには「時効が完成している」と主張する必要があります。

このように「時効が完成している」と主張することを時効の「援用(えんよう)」といいます。

時効が完成していても、時効を援用しなければ時効による権利の消滅の効果は確定的にはなりません。

そのため、時効が完成した後でも被害者から慰謝料を請求される可能性はあります。

時効が完成した後に被害者から請求を受けた場合、通常は時効を援用することにより、相手の請求を退けることになります。

もっとも、ご自身が時効による消滅の効果を享受するのを潔しとしないのであれば、敢えて時効を援用せずに支払いに応じることも可能です。

時効完成後の承認

時効の完成後に被害者から慰謝料を請求された場合に、時効が完成していることに気づかずに慰謝料の支払義務を認めてしまう(承認する)ケースもあります。

この場合、承認した後に時効が完成していることに気がついても、気がついた時点では時効を援用することができなくなります。

時効の完成を知らなかったとはいえ、一度承認がされれば、請求者(不倫の被害者)は「もはや時効は援用されない」という期待を抱くので、その後に改めて時効を援用することは信義に反するとされているためです。

時効が完成しているかどうかは、ご自身で判断するのが難しい場合が多いです。

そのため、請求を受けた場合、まずは専門家に相談されることをおすすめします。

援用の効力は人ごとに生じる

時効の援用の効力は、人ごとに生じます。

例えば、被害者が時効の完成後に、ご自身と不倫の相手の双方に慰謝料を請求した場合、不倫の相手が時効を援用したとしても、その効力はご自身には及びません。

したがって、ご自身も時効による消滅の効果の享受を希望する場合はご自身で時効を援用する必要があり、希望しない場合は援用せず承認すればよいということになります。

POINT② 不倫の相手と揉める可能性があることに注意する

不倫の慰謝料は、加害者2人の間では責任度合いに応じて分担されるものとされています。

そのため、ご自身が慰謝料を負担割合を超えて支払った場合は不倫の相手に求償することができますし、反対に不倫の相手から求償されることもあり得ます。

その際、負担割合などについて折り合いがつかなければ、せっかく被害者との紛争が解決しても、不倫の相手との間で新たな紛争が始まってしまうことになります。

このようなトラブルを防止するため、被害者との紛争の段階で求償に関する取り決めをしておくケースなどもありますが、高度な専門技術が必要になるので、詳しくは専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

POINT③ 離婚問題に詳しい弁護士へ相談する

不倫の慰謝料の請求への対応方法は、被害者や不倫の相手との関係性、状況等によって異なるため、弁護士に相談して事案に即した具体的なアドバイスをもらうとよいでしょう。

また、不倫の問題は、一旦被害者との争いが解決したとしても、その後に離婚や求償の問題で争いが再発するリスクがあります。

専門の弁護士であれば、将来のトラブル防止の観点からも、全般的にサポートしてくれるでしょう。

 

 

まとめ

以上、不倫の時効について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

不倫の時効は、原則として不倫があったことを知った時から3年であるため、不倫が発覚したらなるべく早く請求することが大切です。

不倫相手が分からないまま20年が過ぎてしまった場合も、時効により請求ができなくなるため、なるべく早く不倫相手を特定することも大切です。

時効期間は延長することができますが、具体的に実践するには専門知識と技術が必要になります。

そのため、不倫問題についてお悩みの方は、専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

離婚問題に強い弁護士であれば、不倫問題についてサポートしてくれるのみならず、不倫を原因とした離婚問題についても全般的にサポートしてくれます。

当事務所では、離婚問題を専門に扱うチームがあり、不倫問題について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

不倫問題については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、不倫問題にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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