精神的虐待を受けたと主張する妻との離婚を回避できますか?

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー

弁護士の回答

相手が受けたショックが大きい場合、気持ちは変わらないかもしれません。

しかし、まずは修復に向けて努力されてはいかがでしょうか。

精神的虐待は、様々な状況が想定されます。

以下、相談事例をもとに解説します。

 

 

相談事例

私は、5年前に妻と結婚しました。

子供は二人(4歳、2歳)がいます。

妻は要領が悪く、物事をテキパキとこなせません。

私は、イライラして、妻に対して、「能無し」「何もできない」「頭が悪い」などの暴言を言ってしまうことが度々ありました。

すると、昨年の4月に妻が突然、子供を連れて実家へ行きました。そして、うつ病ということで心療内科へ入院しました。

妻が実家へ行って以来、私は、月に1度は妻の実家へ通い、妻に家へ戻るように言いますが、妻は戻らないと言いました。

実は、妻は強度の実家依存があり、このままずっと実家で暮らすつもりなのです。

そして、半年ほど前に裁判所から離婚調停の呼び出しが送られてきました。

離婚理由には、精神的虐待と書いてありました。妻には、弁護士がついていました。

私は、妻を言葉で責めたことを妻と妻の両親に謝罪しました。

そして、今後は、円満に家族4人で生活するつもりだと言いました。

調停に2回出席しましたが、離婚しようとする妻と、離婚できない私はまったく平行線で、調停不成立となりました。

私は、妻の弁護士に「円満にいくように、取り計らってください。」とお願いをしていますが、恐らく妻側は、離婚訴訟の準備を進めていると思われます。

私は、家族が円満に生活できるように願っているのですが、もう裁判となって離婚するしかないのでしょうか。アドバイスをよろしくお願いいたします。

 

 

弁護士からのアドバイス

離婚が認められるか?

今回は、離婚をしたい奥さんと離婚をしたくない相談者の方の意見が真っ向から対立している状況で、調停もすでに不成立で終了しています。

この場合、離婚をしたい奥さんがとれる方法としては、家庭裁判所に離婚訴訟を起こすという方法です。

裁判で離婚をする場合、協議離婚や調停離婚のような場合と違い、「離婚原因」と呼ばれる、下表の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。

離婚原因
  1. ① 相手方に不貞行為があった
  2. ② 相手方の生死が3年以上明らかでない
  3. ③ 相手方から悪意で遺棄された
  4. ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  5. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な理由がある

引用元:民法|電子政府の窓口

今回のケースでは、5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」という要件を満たすかが問題となります。

相談者の方のお話ですと、奥さんに暴言を吐いて、うつ病になってしまったとのことですが、これが事実であり、裁判で証明されれば、その他婚姻を継続しがたい重大な事由があると判断される可能性があります。

この点は、相談者の方の発言内容や頻度等の事情によります。

奥さんがうつ病で心療内科に入院されたという事実については、診断書等に相談者の方の言葉の暴力、精神的虐待が原因であると記載されている可能性もあります。

また、この事実だけでは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある」とは言い切れないとしても、相談者と奥さんは、昨年の4月から別居しているという事実もあります。

「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」という要件は、様々な事情を総合的に判断します。

したがって、別居という事実も当然この判断に影響してきます。

現在の別居の状況が続けば続くほど、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められる可能性は高くなり、離婚という結果になってしまいます。

 

夫婦関係の修復のポイント

相談者の方が、現在は奥さんに謝罪もされて円満な家庭生活を送れるように、もう一度やり直したいという気持ちをお持ちなのであれば、奥さんにその気持ちを分かってもらえるようにすべきでしょう。

なかなか奥さんの実家に頻繁に顔を出すことは難しいかもしれませんが、奥さんの弁護士にも気持ちを伝えて、奥さんと話す機会を多くとる必要があると思います。

そうしないと、上で説明したように、奥さんが裁判を起こせば、離婚という相談者の方が望まない結果となる可能性が高いです。

また、状況によっては、夫婦関係修復のためのカウンセリングを受けるという方法もあります。

最近では、離婚を専門とする法律事務所において、カウンセリングを提供しているところもありますので、法律相談と合わせて修復のカウンセリングを受けて見られても良いでしょう。

 

 

まとめ

以上、精神的虐待の場合の離婚回避について、実際の相談事例をもとに詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

夫婦となったからには簡単に離婚をすべきではありません。

お子様がいらっしゃるのであれば、なおさら慎重に検討すべきです。

離婚を回避するためには、法律論だけではなく、カウンセリングなどのきめ細やかなサポートが必要となります。

離婚回避について、疑問がある方は離婚専門の弁護士へのご相談をお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?   

続きを読む