産後クライシスとは?|乗り越え方と離婚への対処法を弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

産後クライシスとは、産後、夫婦の愛情が急速に冷え込むことをいいます。

ここでは、産後クライシスの乗り越え方と、離婚を検討する場合の対処法について、解説いたします。

 

産後クライシスとは

産後クライシスという言葉をご存じでしょうか?

産後クライシスとは、産後、夫婦の愛情が急速に冷え込むことをいいます。

 

産後クライシスチェックリスト

まずは以下の項目に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。

産後クライシスチェックリスト

いかがだったでしょうか。

上記のどれかに該当すれば、産後クライシスに当てはまるというわけではありません。

しかし、複数該当するようであれば、夫婦関係が悪化しているといえるため、産後クライシスに該当する可能性があるといえるでしょう。

 

産後クライシスと産後うつやマタニティーブルーとの違い

産後クライシスは、近年、注目されている言葉ですが、よく似たものとして、「産後うつ」や「マタニティブルー」という言葉があります。

これらはすべて、出産をきっかけとするものであることは共通しています。

これらと産後クライシスとは何が違うのでしょうか。

これらの特徴をまとめると下表のとおりとなります。

項目 期間 状況
産後クライシス 産後半年以内に愛情が冷え込み、しばらく続くケースが多い 夫婦関係の悪化という状況を表したもの
産後うつ 出産後一定期間経過後から2週間以上続くことが多い ホルモンバランスの急激な変化や育児への不安から不安定となる精神的な病気
マタニティーブルー 出産後から2週間程度 ホルモンバランスの崩れなどから生じる情緒不安の総称

※一般的な傾向であって例外はあります。

 

産後クライシスの原因

産後クライシスの原因については、諸説がありますが、出産後にホルモンバランス、体調不良、子育てに対する不安、ライフスタイルの変化など、心身両面でのさまざまな原因によって生じるものと考えられています。

ある調査では、6割以上の母親が産後クライシスを経験したというデータもあります。

参考:株式会カラダノート 産後クライシス調査

民間会社の調査ではありますが、産後に夫婦関係が悪化するというケースは決して珍しいものではないことがわかります。

 

 

産後クライシスの乗り越え方

当事務所は、離婚を専門にしていることから、離婚相談の中で、出産後、夫への愛情がなくなったという相談をたくさん受けています。

また、反対に男性の方からは、出産後、妻から急に離婚を切り出されて困っているとの相談も受けます。

そこで、この産後クライシスへの男女別の対応方法についてご紹介します。

夫の対応方法

普段とは異なるということを理解する

夫としては、産後クライシスというものがあることを認識し、妻の体調不良を理解してあげることが出発点です。

また、上記のとおり、出産後の女性はホルモンバランスの急激な変化により、情緒不安定(マタニティーブルー)になったり、産後うつになってしまう可能性があります。

したがって、「妻に悪気はなく、一時的な症状である」と前向きに捉えることが必要かと思われます。

 

心療内科を受診する

産後うつは病気であるため、治療が必要なケースもあります。

また、産後うつか否かは専門医でないと診断ができません。

そのため、妻の不安定な状況がしばらく続くようであれば、心療内科の受診を検討された方がよいでしょう。

 

育児に協力する

夫としては、育児や家事に積極的に協力することが産後クライシスを回避する一番の方法です。

出産後の不安定な時期であることを認識し、相手に配慮してあげることで、離婚を回避できる可能性が出てきます。

 

妻の対応方法

夫をほめてイクメンにしたてる

産後クライシスは、夫の育児に対する非協力的な態度が原因とも考えられます。

そのため、夫をイクメンにすることができれば、離婚の危機は回避できる可能性があります。

しかし、夫に「子育てを手伝って!」と言っても、夫からは「仕事で疲れているのに。」「専業主婦なんだから頑張れ。」などの返答が予想されます。

そこで、夫に自発的に育児に協力してもらうためには、夫の育児に対する感謝の意を現すことが大切です。

例えば、夫に少しの間だけ、子どもを抱っこしてもらったり、ミルクをあげてもらったときに、「本当にありがとう。おかげで助かったよ。」などと言ってあげると、夫は喜んで、協力的になる場合があります。

 

他人の話を信じない

育児に非協力的な夫に対して、不満をもつのは、他と比べるからです。

例えば、ママ友から「うちの主人はよく子育てに協力してくれる。」などの話を聞くと、どうして夫は何もやってくれないのだろうと考えてしまいます。

しかし、このような自慢話は、本当とは限りません。したがって、信じないことが大切です。

 

夫の良い面を見る

育児に非協力な夫は、仕事人間の場合が多いといえます。

男性が仕事に一生懸命なのは、愛する妻と生まれてきた子のためであると考えている場合が多くあります。

したがって、このような場合は、自分たちのために一生懸命働いてくれていると考えれば、気持ちが楽になるでしょう。

 

 

産後クライシスがひどい場合

心療内科を受診する

産後クライシスが深刻な場合、夫婦ともストレスがかかり、つらい日々を過ごされていると思います。

気分の落ち込みが激しいと感じたら、心療内科を受診された方がよいでしょう。

 

相手と距離を取る

夫婦が一緒に生活していて衝突が絶えない場合、一時的に別居するという選択肢もあります。

いきなり離婚ではなく、当面の間、別居することで、冷静になって自分や相手のことを考えることができ、離婚を回避した例もあります。

なお、別居する場合はその期間の生活費が問題となります。

別居期間中の生活費は婚姻費用といって、収入が少ない方(通常は妻側)は収入が多い配偶者(通常は夫側)に請求することが可能です。

 

 

産後クライシスが終わらないときの離婚問題

産後クライシスを乗り切るための努力を尽くしても、状況が改善されない場合、離婚を視野に入れて行動しなければならなくなります。

産後クライシスについての離婚事案では、特に以下の点が問題となります。

 

離婚が認められるか

夫婦双方が離婚に同意すれば問題とはなりませんが、いずれか一方が離婚を拒否した場合、法律上、離婚が認められるかが問題となります。

法律上、離婚が認められるのであれば、相手が離婚を拒否しても、裁判を起こすことで離婚が成立するからです。

離婚について、民法は、次の5つの場合に限り、離婚を認めると規定しています。この5つは「離婚原因」と呼ばれています。

離婚原因
  1. 相手方に不貞行為があったとき
  2. 相手方から悪意で遺棄されたとき
  3. 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき

産後クライシスの事案では、上記のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき」に該当する可能性があります。

もっとも、これに当てはまるかは、具体的な状況によって異なります。

そのため、離婚専門の弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

親権がどうなるか

産後クライシスの事案では、子供が小さいということが想定されるため、基本的には母親が有利と考えられます。

もっとも、母親側に親権者として不適格な事情があったり、父親側も育児を積極的に行っている場合、父親が親権者となる可能性もあります。

 

面会交流をどうするか

親権を取得できない場合でも、子供と定期的に面会する権利があります。

そのため、面会交流について、頻度、方法などを協議する必要があります。

 

養育費はいくらが適切?

離婚する場合、子供の養育費の取り決めも必要となります。

当事務所は、養育費の相場について、素早く確認するためのシミュレーターをホームページ上に掲載しております。

 

まとめ

以上、産後クライシスについて、特徴、原因、対応方法等を詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

産後クライシスを乗り切るためには、その特徴を認識して、相手に対する気遣いの気持ちを持ち、配慮してあげることが重要です。

また、産後クライシスが深刻な場合は独りの力ではどうにもできません。

心療内科や弁護士など外部の専門家に相談されることをお勧めいたします。

この記事が産後クライシスでお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

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