【申立書付】子の氏の変更のために知っておくべきこと|弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

子の氏の変更とは

子の氏の変更とは、子供が父又は母と氏(「うじ」と読みます。名字のことです。)が違う場合に、家裁の許可を得て変更することをいいます。

例えば、父母が離婚した場合に、父の戸籍に入っている子供が母の戸籍に入るときに行います。

ここでは、子の氏の変更を行うために必要な知識について、解説いたします。

 

 

家裁の許可が必要な場合

離婚して父母が別々の戸籍になった後、今まで父の戸籍に入っていた子供を母の戸籍に入れる場合、家裁の許可が必要となります。

 

親権者である母が旧姓に戻らない場合は家裁の許可は不要?

結婚に際して夫の名字にした母親が、離婚後も引き続き夫の名字を使用するケースがあります(「婚氏続称」といいます。)。

この場合、同じ名字なのだから、子供を母親の戸籍に入れるのに、家裁の許可はいらないようにも思えます。

しかし、このような婚氏続称の場合でも、家裁の許可は必要となるため注意してください。

わかりにくいため、具体例で解説します。

具体例

福岡花子さんが熊本太郎さんと結婚し、熊本太郎さんの戸籍に入ったとします。

母親は熊本花子となりました。

子供が生まれ、次郎と名付けました。

このとき、戸籍はつぎのようなイメージです。


その後、花子さんは太郎さんと離婚しました。

しかし、引き続き「熊本」の姓を使うこととします。

このとき、花子さんが太郎さんを筆頭者とする戸籍から、自分を筆頭者とする戸籍に次郎くんを入れるためには、子の氏の変更許可の申立てが必要となります。

父親も母親も同じ「熊本」という名字ですが、父親の戸籍と母親の戸籍が違うため、字は同じでも、別々の氏と考えられるので、この申立てが必要となるのです。

 

 

子の氏の変更の手続きの流れ

①申立てについて

申立てができる人

家庭裁判所で子の氏の変更申立ができるのは次の方です。

子供が15歳未満の場合

親権者などの法定代理人

子供が15歳以上の場合

子供本人

なお、弁護士は上記のいずれの場合でも、依頼を受けて、代理人として申立てを行うことが可能です。

 

子の氏の変更に必要な書類

下表の書類が必要となります。

  • 子の氏の変更許可の申立書
  • 申立人(子)の戸籍謄本
  • 父と母の戸籍謄本

※子が親と同じ戸籍の場合、1通で親子の戸籍を兼ねることが出来る

※戸籍謄本は発行から3ヶ月以内

 

子の氏の変更許可の申立書の記載要領

当事務所では、子の氏の変更許可の申立書のサンプルをホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。

 

書類の提出先について

申立ては、子供の住所地を管轄する家裁となります。

参考:裁判所の管轄区域

 

②審判について

離婚にともなう子の氏の変更許可については、通常、問題なく許可されるはずです。

また、特に裁判所への出廷の必要もありません。

申立後、審判までの期間は数日程度見ておけばよく、早ければ即日審判の場合もあるようです。

複雑な事案の場合、裁判所での審問などの可能性もあります。

万一不許可となった場合、これに対する不服申立ても可能です。

 

③役場での入籍届け

家裁の許可が出たら、戸籍に反映させるために役場での手続きが必要となります。

 

届け出ができる人

役場に届け出ができるのは次の方です。

子供が15歳未満の場合

親権者などの法定代理人

子供が15歳以上の場合

子供本人

 

入籍に必要な書類

下表の書類が必要となります。

本籍地の役場に届ける場合
  • 印鑑
  • 子の氏の変更許可の審判書の謄本
本籍地以外の役場の場合
  • 印鑑
  • 子の氏の変更許可の審判書の謄本
  • 子どもが記載されている戸籍全部事項証明書または戸籍謄本
  • 子どもが新たに入籍する戸籍全部事項証明書または戸籍謄本

参考:福岡市ホームページ

 

届け出先について

住所地または本籍地の役場

くわしくは届出先の役場にお問い合わせください。

 

 

15歳以上のお子さんに知的障害がある場合

氏の変更手続は、子が15歳以上の場合、子の意思が重視され、自ら手続を行うものと法律上定められています。

したがって、15歳以上のお子さんの場合、親権者が氏の変更の手続を行うことは原則としてできません。

しかし、お子さんに重度の知的障害がある場合など、15歳以上のお子さん本人の意思が確認できなかったり、自ら手続をすることが困難な場合があります。

この場合、氏の変更手続を行うには注意が必要です。

まず、氏の変更手続は、上記のとおり、裁判所に氏の変更許可の審判を求めます。

裁判所は、子に知的障害があるなど自ら手続を行うことが困難と判断した場合には、子が15歳以上でも、親権者が手続を行うことを比較的緩やかに認める傾向にあります。

裁判所が許可の審判を出した後、戸籍上の氏の変更手続を完了するためには、各地の役所の戸籍係に、許可の審判と入籍届をあわせて提出する必要があります。

しかし、裁判所の許可の審判があっても、戸籍係が、15歳以上の子自らが手続を行っていないとして、氏の変更の手続(=親権者の戸籍に新たに入る手続)を認めないことが実務上あるようです。

戸籍係が受け付けてくれないと、裁判所が許可を出したにもかかわらず、戸籍上の氏の変更が認められず、お子さんと親権者となった母(父)が別の名字のまま生活を続けなければなりません。

したがって、15歳以上でその意思を確認することが困難なお子さんの氏の変更の手続は、慎重に行うことが必要です。

 

 

まとめ

以上、氏の変更許可について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

氏の変更許可の申立ては、離婚した後に子供の戸籍を変更する際に必要となります。

これは、子供の名字が変わらなくても必要となります。

手続自体はそれほど難しくはなく、素人の方が自分でも可能な手続きです。

しかし、書類をそろえて裁判所に提出しなければならないので、面倒と思われます。

離婚問題を依頼されていれば、その後の氏の変更許可についても、無料でサポートしてくれる事務所もあるので、ご相談されてみると良いでしょう。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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