離婚とうつ病【弁護士が解説】

  
執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
離婚分野に注力し、事務所全体の離婚・男女問題の相談件数は年間700件を超える。(2019年実績)

離婚とうつ病

離婚問題に直面した場合、誰もが大きなストレスを抱えます。

特に、パートナーの不貞、子の奪い合い、DV・モラハラ等の悩みがある場合は、強度のストレスによって、うつ病にかかる方はとても多いです。

うつ病にかかると、仕事ができず、長く自宅療養を強いられるケースも見られます。

このような場合、収入が途絶え、生活していくことも、ままならなくなってしまいます。

そのため、このような場合に考えられる対応策について、ご紹介させていただきます。

 

 

うつ病で慰謝料を請求できる?

お金慰謝料の請求が認められるためには、加害者の不法行為の成立が必要となります。

したがって、配偶者にDV・モラハラがあり、そのことが原因でうつ病にかかってしまったような場合は慰謝料を請求できる可能性があります。

また、DVの場合は怪我の治療費なども賠償請求の可能性がありますが、これは財産的損害であって、精神的損害の慰謝料とは区別されています。

もっとも、DV・モラハラの場合、裁判所に慰謝料の支払いを認めてもらうのは決してかんたんではありません。

それは、DV・モラハラについての立証が壁となるからです。

すなわち、DV・モラハラの加害者が加害行為の存在について否認した場合、その立証責任は請求者である被害者側が負います。

他方、うつ病の患う方の多くは、加害者から精神的な虐待や暴言を受けていたという事案です。

このような精神的な虐待や暴言は、目に見えない暴力であり、証拠がない場合がほとんどです。

そのため、うつ病の場合の慰謝料請求は難しい場合が多いのです。

うつ病の慰謝料の問題については、必要な証拠の内容など、専門家に相談されることをお勧めします。

DV夫への慰謝料請求の証拠とポイントについてはこちらページをご覧ください。

 

DVを弁護士に相談するメリットについてはこちらを御覧ください。

 

 

別居して生活費を請求

もし、うつ病の理由が配偶者のDV・モラハラ等にあるのであれば、別居を検討されるとよいでしょう。

被害者の方が収入が低い女性の場合、「別居すると、生活費をもらえなくなる」と心配される方が多くいらっしゃいます。

しかし、別居中の生活費は「婚姻費用」といって、収入が多い配偶者は収入が少ない配偶者対し、支払う法的な義務があります。

別居と婚姻費用については、詳しくはこちらのページを御覧ください。

 

 

うつ病を理由に離婚できる?

精神疾患を理由とする離婚の可否については、こちらのページで解説しています。

 

 

障害年金を受ける

年金分割実は、あまり知られていませんが、うつ病の場合でも、一定の要件を満たすと、障害年金を受給できるのです。

障害年金とは、病気やケガなどが原因で、一定程度の障害が継続する場合、生活を保障するための年金をいいます。

離婚問題でうつ病等にかかった場合も対象となります。

障害年金は、障害の程度によって、1級(最も障害の状態が重い)から3級(最も障害が状態が軽い)に認定され、障害の状態が重いほど受給できる年金額も多くなります。

また、障害年金の内容は、初診日において加入している年金の種類によって異なります。

 

 

年金の種類

国民年金の場合

自営業、学生、主婦などの方。

1級と2級に該当する場合しか対象となりません。

障害基礎年金
1級または2級
2016年度金額(定額)
975,125円(1級)
780,100円(2級)

 

厚生年金の場合

会社等でお勤めをされていた方。

3級に該当する場合でも、対象となります。

さらに、3級に該当しない場合(準3級)には、障害手当金として一時金が支給されます。

障害厚生年金
1級~3級又は障害手当金

国民年金の場合は定額ですが、厚生年金の場合、年金加入歴やもらっていた給与額などによって変化します。

また、1級または2級に該当する場合は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

 

子ども・配偶者がいる場合

また、子供がいる場合には、国民年金で子の加算が付き、配偶者がいれば厚生年金の方で加算が付きます。

等級 国民年金 厚生年金
1級 975,120円
子がいる場合→1人224,500円加算
(3人目以降は1人74,800円)
報酬比例の年金額 × 25%増し
配偶者がいる場合 → 224,500円加算
2級 780,100円
子がいる場合→1人224,500円加算
(3人目以降は1人74,800円)
報酬比例の年金額
配偶者がいる場合 → 224,500円加算
3級 なし 報酬比例の年金額
最低保証額 = 585,100円
障害手当金 なし 報酬比例の年金額 × 2(2年分)
最低保証額は 1,170,200円
子がいる場合:2人目まで(1人につき)224,500円、3人目からは74,800円
子:18歳到達年度末までの子(すなわち、高校卒業まで)又は20歳未満の障害等級1・2級の子
配偶者の加算:1、2級の場合のみに加算。また、以下の要件が必要。

1.配偶者が、退職共済年金や障害年金を受け取っていないこと。
2.配偶者が65才未満であること。
3.年金加入者と同一の世帯で生計を共にしており、配偶者の年収が850万円未満であること。

 

 

障害年金を受給するための要件

チェックのイメージイラスト障害年金を受給するためには、以下の要件が必要です。

1.初診日を特定する

2.年金保険料を一定程度以上、納付していること

3.等級の認定基準を満たすこと

それぞれについて、詳しくご説明させていただきます。

初診日を特定する

障害年金の要件において、まず、最初に特定しなければならないのは初診日です。

初診日とは、あくまで初めて医師の診察を受けた日であり、うつ病を発症した日ではありません。

なお、うつ病の場合、当初は精神疾患と考えずに、内科などを受診することも多くあります。

この場合は、一番初めに内科を受診した日が初診日となります。

初診日が特定したら、その日を基準として、加入している年金の種類(国民年金、厚生年金、共済年金)が決まります。

たとえば、初診日の時点では、厚生年金に加入していた場合で、その後会社を辞めて国民年金に変わっていたとしても、障害年金においては、厚生年金が請求できます。

また、障害を認定する日は、初診日から1年6か月後となっておりますので、初診日を特定することで障害認定日も確定します。

 

年金保険料を一定程度以上、納付していること

直近1年間に滞納がないか

まず、初診日の前々月において、直前1年間に年金保険料の滞納があるかどうかを確認します。

税問題のイメージイラスト例えば、初診日が2020年4月1日の場合、前々月の2月から1年分遡り、2019年2月末日までの期間に保険料の滞納(※)がなければ納付要件は満たすことになります。

※あくまで滞納がなければいいので、国民年金の保険料を払えない方で免除の申請を出していた場合は要件を満たします。

過去の年金で3分の2以上納めていたか

直近1年間に未納・滞納がなければ納付要件はクリアしますが、未納・滞納があった場合は、過去の年金納付記録すべてを確認して、3分の2以上納めているかを確認します。

障害状態の確認

障害認定日の時点(初診日から1年6か月後)で、障害の程度に応じて1~3級に認定されると、障害年金が支給されます。

各等級の認定基準は下表のとおりです。

 

等級の認定基準を満たすこと

厚生労働省による等級の認定基準は以下のとおりです(平成23年6月30日年発0630第1号)。

等級 障害の状態
1級 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの
2級 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限(※)を受けるもの
3級 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

※日常生活が著しい制限を受ける程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。

 

 

障害年金を申請するために必要なもの

医師のイメージ画像障害年金を申請する場合、医師の診断書と病歴状況申立書が重要となりますので、これをうまく準備することがポイントとなります。

診断書は、自分の悪い状態を紙に書いたり、家族と一緒に病院に出向いて渡したりすると、うまくいくケースがあります。

病歴状況申立書は、発病から現在までの病気の流れを自分で書いていけばいいのですが、内容によっては判定がまったく変わりますので、注意が必要です。

たとえば、会社に在職していた期間については、障害のために、欠勤や休職を繰り返していたということをきちんと書いておかないと、通常業務をしていたと判断されてしまい、評価が下がることがありますので注意が必要です。

その他の注意点

障害年金の申請はとても複雑です。

また、障害年金に該当する状態であったにもかかわらず、制度のことを知らずに障害年金を受給していなかった場合などは、5年間に限って(時効の関係)、さかのぼって申請できる場合があります(遡及請求)。

これが認められると、非常に大きな額を受給することが可能となります。

 

まとめ弁護士以上、離婚でうつ病になった場合に考えられる対応策について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

うつ病が配偶者のDV・モラハラ等が原因の場合、これ以上悪化しないためにも別居して物理的距離をおくことを検討すべきです。

また、慰謝料の請求には、その可否や証拠の内容について、専門的な判断が必要となります。

相手に非がない場合、相手への金銭的請求はできませんが、障害年金を受給できる可能性があります。

当事務所では、離婚問題に注力した弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、離婚に関する様々な情報やノウハウを共有しており、離婚とうつ病に苦しむ方々を強力にサポートしています。

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なぜ離婚問題は弁護士に相談?良い弁護士の見極め方とは…?
  
執筆者 弁護士 宮崎晃
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
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