医師・医者の婚姻費用はどうなる?【弁護士が解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

婚姻費用とは

婚姻費用とは、簡単に言うと生活費のことです。

生活する上で、食費(食材の購入費や外食費)、衣服の購入費、賃料(居住費)、携帯電話の料金、光熱費、子供の学費(塾代など)、もろもろ費用が必要となります。

離婚を決意した夫婦とはいえ、上記のような生活費は必要です。

また、夫婦は収入に差がある場合でも、同じレベルの生活を行うべきという考えが根底にあります。

母子家庭そこで、収入が少ない側(多くの場合は妻側)は、収入が多い側(通常は夫側)に対して、離婚が成立するまでの間、婚姻費用を請求する権利が認められています。

養育費との違い

婚姻費用は、あくまで離婚が成立するまでのものです。
子供がいない場合でも請求することが可能です。
これに対して養育費は、子供がいる場合に限り、離婚後に支払い義務が認められるものです。

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医師の婚姻費用

医師の場合、婚姻費用は、以下の点に注意が必要です。

年収が2000万円を超える場合

配偶者の一方が医師の場合、年収が2000万円を超えることが多々あります。

このような場合、婚姻費用の算定が非常に難しくなります。

すなわち、婚姻費用の算定にあたっては、家庭裁判所は、通常、算定表を用います。

【 婚姻費用の算定表はこちら ⇒ 算定表(PDFファイル) 】

しかし、この算定表には年収の上限2000万円(自営業者は1567万円)までしか記載されておらず、これを超える場合はどのようにするかが不明確なのです。

つまり、義務者(支払う側)の年収が3000万円、4000万円と上がっていけば、婚姻費用は上限で算定すべき(打ち止め)という考え方と婚姻費用も増加する(打ち止めなし)という考え方があります。

ここでは、具体的な事例をあげて、説明します。

医師である夫の所得(自営業者)が2500万円、妻は年収150万円、子どもが2人(15歳と9歳)、夫婦が別居して、妻が監護者として子どもたちを育てている場合を例にとって考えてみましょう。

具体例 夫婦が別居して、妻が監護者として子どもたちを育てている場合

夫:医師(自営業:2500万円)
妻:パート(年収:150万円)
子ども:2人(15歳、9歳)


算定表は表14婚姻費用・子2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)を使用します。

表の「自営」の縦軸を見ると、義務者の年収の上限は、「1567」(万円)となっています。

妻の年収は150万円なので、横軸の「給与」の「150」(万円)を基準にします。

A:婚姻費用は上限で算定(打ち止めあり)

この考え方を取ると、義務者の所得を1567万円とするので、縦軸の「1567」の欄を右横にのばした線と、横軸の「150」の欄を上に伸ばした線が交差するのは「42〜44万円」の枠内となります。

したがって、この見解によれば、婚姻費用は月額42〜44万円が適正額となります。

B:婚姻費用も増加する(打ち止めなし)

この考え方を取ると、夫の所得(2500万円)が算定表の上限(1567万円)を超えているため、算出できません。

この場合、次のような計算式を使って算出します。(計算がやや複雑です。)

① 基礎収入を算出

総収入 × 係数

係数:自営業者の場合は0.48ないし0.61
給与所得者の場合は0.38ないし0.54

基礎収入とは、実際の収入から公租公課、職業費及び特別経費等を控除したものです。

算定方式は、簡易迅速に算定するため、統計等に基づいて生活費を指数化しています。

上記のように、係数に幅があるのは、生活費が、必ずしも所得額に比例するわけではないからです。

つまり、所得が上がるにつれて生活費も同じ割合で上昇するという性質のものではないので、高額所得者の基礎収入の割合は、そうでない者に比較して小さくなります。

ここでは夫の係数を0.48、妻の係数を0.44で算出することにします。

夫の基礎収入:2500万円 × 0.48 = 1200万円
妻の基礎収入:150万円 × 0.44 = 66万円

② 生活費指数を算出

次に、生活費の割合を定めます。

子の標準的な生活費の指数(以下「子の指数」という)は、親を100とした場合、年齢0歳から14歳までの子については62、年齢15歳から19歳までまでの子については85となると考えられています。

【親を100とした場合】
子どもの年齢:0~14歳→62
15~19歳→85

具体例の場合
夫の係数:100
妻の係数:100
子どもの係数:第1子85、第2子62

③ 権利者世帯に割り振られる婚姻費用

次の計算式により算出します。

(義務者の基礎収入 + 権利者の基礎収入)×(100権利者の指数8515歳以上の子の指数6215歳未満の子の指数 )/(100義務者の指数100権利者の指数8515歳以上の子の指数6215歳未満の子の指数

具体例の場合
(1200万円 + 66万円)×(100 + 85 + 62)/(100 + 100 + 85 + 62)≒ 901万円

④ 義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額

次の計算式により算出します。

上記の額 ー 権利者の基礎収入

したがって、
901万円 ー 66万円 = 835万円

となり、これを12か月で除すと、1ヶ月あたりの婚姻費用は、69万5000円となります(千円未満は切り捨て)。

以上から、Aの考え方では、婚姻費用は月額42〜44万円程度、Bの考え方では月額69万5000円と、考え方の違いで大きく差が生じることがわかります。

夫からすると、当然、Aの考え方が有利であり、妻からするとBの考え方が有利となります。

この点については、いずれかの考え方が正しいというわけではなく、最高裁判所の判断も示されていません。

したがって、具体的な状況に照らして、判断する必要があります。

なお、婚姻費用の基礎収入の係数や生活費指数等についての詳しい解説はこちらのページをご覧ください。

また、他にも所得がある場合についての詳しい解説は、こちらのページをご覧ください。

 

 

まとめ弁護士以上、医師の婚姻費用について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

医師の場合、通常のサラリーマンの事案と異なり、婚姻費用の額が高額化する可能性があるため、権利者側、義務者側とも注意が必要です。

医師の場合は、財産分与等の離婚条件で争いとなることが多く、離婚成立が長期化すると、婚姻費用の額が大きな影響を及ぼします。

また、医師の場合、源泉徴収票などの一般的な収入資料ではなく、確定申告書などの資料が必要となることが予想されます。

確定申告書を素人の方が見ても、理解できないことも多いため、専門家の助言を得るようにされることをお勧めいたします。

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