子供が親権者のもとへ行くことを拒否したらどうしたらいい?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


 

子どもが親権者を拒否したらどうする?

私と元妻との間には、子が1人います。先日、離婚判決で、親権者が母親に指定されてしまいました。

しかし、子どもが母親を毛嫌いしており、母親に引き渡すそうとすると、泣いて嫌がります。

それでも引き渡さなければならないのでしょうか?

 

 

弁護士の回答

結論からいえば、原則として、判決が出ている以上は引き渡さなければなりません。

引き渡さない場合には、人身保護法による違法な拘束に該当し、別の裁判手続がとられ、釈放を命じられる可能性が高まります。

 

子どもが親権者のもとへ行くことを拒絶する例

現実問題、子どもが、母親の元にいくことを拒絶している場合もあります。

例えば、以下のようなケースで、現実にしばしば起こりえます。

それは、母親が不貞行為を行っていることを多感な年齢の子どもが知ってしまった場合です。

母親が不貞行為を行っていたとしても、母親の監護状況には特段問題がない場合には、判決では、父親ではなく、不貞行為をした母親が親権者に指定されることが多いというのが実務感覚です。

しかし、子どもにとっては、不貞行為をした母親に対し、「お父さんを裏切った悪い母親」というイメージが強烈なことがあります。

その場合、母親に悪感情を抱いてしまうことが少なくありません。

そして、裁判所のいうところの「監護状況に特段問題がない」というのは、基本的には調査官の調査により決まるのですが、その調査は、数日にわたり母子関係をみるというような密度の濃いものではなく、数回の面談や家庭訪問だけで決まってしまいます。

しかし、そのような調査だけで、子が心の底で抱いている母親への強烈な嫌悪感を見抜くのは困難というのが現実です。

したがって、事例のような問題が生じうるのです。

 

 

裁判所の判断

では、判決で親権者を母親と指定したにもかかわらず子どもが泣き叫ぶ程に母親の元にいくのに拒否的な場合にはどうすればよいのでしょうか。

この点、参考になる裁判例があります。大阪高裁平成12年4月19日の決定です。

この事案は、まさに事例のように、離婚判決では母親が親権者に指定されたものの、子どもの拒絶が強かったため父親が親権者変更を申し立てたというものです。

親権者変更が認められてしまうと、親権者を母と指定した離婚判決をないがしろにしてしまい、判決に従わなくとも既成事実を積み上げれば親権者変更できるという前例をつくってしまうことになります。

親権者変更を認めてしまうと、裁判所が子を引き渡さないという不正を追認してしまうという点に、その難しさがあります。

結論として、大阪高裁は、親権者変更を認めました。

その理由は、上記のような批判もあるものの、そのような父親が子を引き渡さないという違法行為を踏まえたとしても、なお、親権者を変更するのが子の福祉に適うという結論になったからです。

第一審の判断を出した大津家裁は、こうも触れています。

 

判例① 子どもを連れ去った夫(申立人)に対して「申立人が平成4年9月11日相手方に無断で幼稚園から事件本人を連れ去ったことに端を発し、事件本人(子ども)の親権者を相手方(妻)と定め、事件本人の引き渡しを命じた高等裁判所の判決及び大津地方裁判所の間接強制決定等の司法判断に従わなかったことが主な原因であり、そのことは非難される行動である。」


判例② 子どもを連れ去られた妻(相手方)に対して

「一方、相手方には上記事情変更に関し何ら責められることはなく、相手方の事件本人に対する愛情、監護能力、経済的家庭環境、親族の援助等申立人と比して劣ることはなく親権者として不適当なことはない。」

としたうえで、最後には、

「事件本人及びCに実母に対する負のイメージを抱かせ続けるのは同人らの性格形成上弊害が大きく、同人らの監護を担う申立人がこのことを十分理解しその解消に向けて努力し、将来同人らと相手方が円滑な温かい交流ができるよう配慮することを切望する。」

 

末尾に上記のような記載がなされる例はあまりありません。

むしろ、裁判官自身非常に頭を悩ませた事案であり、判断だったのであろうことがうかがえます。

この結論については、評価は分かれていますし、裁判官によっては親権者変更を認めないという結論もありえたと思います。

 

 

お困りの方は弁護士へご相談ください

判決で母が親権者として指定された以上、父親としては、まずは子どもに対し、「お母さんのところに引き渡さないといけない」旨を説明し、粘り強く説得すべきです。

それでも子どもの拒絶的な反応が強いのであれば、推奨はできませんが、この裁判例があることを踏まえて、親権者変更を目指して、徹底的に闘うというのもありうるのではないでしょうか。

 

 

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