慰謝料的財産分与とは?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


 

不倫の慰謝料について

私は、元夫と離婚が成立しております。原因は、元夫の不貞行為です。

離婚時には、取り決めとして夫婦共有財産の全てを私に分与するとの協議が成立しました。

別途、不貞行為に基づく慰謝料請求はできますでしょうか。

 

 

弁護士の回答

ご質問について、当事務所の離婚専門の弁護士がご回答いたします。

別途、不貞行為に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。

 

財産分与とは?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配すること等を目的とするものです。

 

 

慰謝料的財産分与とは?

財産分与については、条文上以下のように規定されています。

民法768条3項
「・・・、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」

財産分与においては、「一切の事情」を考慮するので、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であって、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被った精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付も含めて財産分与の額及び方法を定めることもできると解されています。

このような慰謝料請求としての性質を持つ財産分与をいわゆる慰謝料的財産分与といいます。

 

慰謝料請求について

離婚に伴う慰謝料とは、「離婚」によって被る精神的苦痛による損害の賠償です。

個別の有責行為(たとえば、不貞行為)により生じた精神的苦痛に対する損害の賠償(離婚原因慰謝料)と離婚により配偶者の地位を失うことから生じた精神的苦痛に対する損害との双方を含むものであると考えられています。

そして、実務上は、双方を明確に区別しておらず、関連する一個の不法行為として考えられています。

 

慰謝料と慰謝料的財産分与について

離婚に伴う慰謝料と慰謝料的財産分与は、基本的には、別個の法律問題として考えることができます。

もっとも、財産分与にあたって、損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合には、さらに請求者が相手方に不法行為を理由に離婚による慰謝料の請求をしたときには、慰謝料的財産分与がなされている事情をも勘案しなければならないと考えられています。

そして、慰謝料的財産分与によって請求者の精神的苦痛に対する全ての賠償がされたものと認められる場合には、重ねて慰謝料請求をすることができません。

つまり、慰謝料的財産分与と離婚に伴う慰謝料の両取りをすることはできないということになります。

また、双方は、時効の点でも異なります。

離婚に伴う慰謝料請求が離婚成立後3年であるのに対して、慰謝料的財産分与は離婚成立後2年となります。

 

お悩みの方は弁護士へご相談ください

本件では、夫婦共有財産の全てを分与するとの協議が成立しているので、このような財産分与が慰謝料としての損害賠償の要素を含めた内容・趣旨であったかが重要となります。

損害賠償の要素を含めたか否かは、協議書が作成されている場合には協議書の内容・文言、分与された財産の価値、有責行為の軽重、その事情を考慮して判断されます。

そして、仮に、財産分与が慰謝料的財産分与としての性質を有していると認定された場合であっても、その額及び方法において、請求者の精神的苦痛を賠償するには足りないと認められるものであるときは、別個に不法行為を理由として離婚に伴う慰謝料請求をすることができます。

たとえば、「夫婦共有財産の全てを分与する」という合意があったとして、共有財産の総額が現金50万円であったとした場合、妻が2分の1を超えて得られた経済的利益は25万円となりますが、これで慰謝料的要素が考慮されているのか(精神的苦痛を慰謝しているのか)というのは疑問です。

一方、総財産が5000万円であったとした場合、妻が2分の1を超えて得られた経済的利益は2500万円となります。これほど多額の経済的利益が生じうるのであれば、夫としては争ってもよいところそれをしなかったわけなので、慰謝料的要素を加味したと見る余地が大きくなってくると考えられます。

もちろん、多額の財産分与がなされたとしても、合意書や当事者間のやり取りを勘案すると、慰謝料的要素が加味されていないという評価がなされる場合は、別途慰謝料を請求する余地は残ります。

したがって、まずは、当該財産分与が慰謝料としての性質をもっているか否かによって、別に支払う慰謝料の額が変動するということになります。

 

 

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