養育費を払わない元夫の面会交流を拒否してもいい?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

面会交流について質問です。

離婚後、養育費を支払っていなかった元夫が面会交流を求めてきました。

私としては、養育費を支払っていない元夫の面会交流に応じたくありません。

法律上、拒否することに問題はありませんか。

 

 

弁護士の回答

原則として、面会交流の請求を拒否することは難しいですが、養育費の未払い以外で面会交流を制限すべき事情がある場合には、面会交流を制限することができます。

 

面会交流の制限事由

現在の裁判所実務のおいては、明らかに子どもの福祉(利益)を害するような特段の事情がない限り、面会交流を積極的に認めるべきという運用がされています。

そして、明らかに子どもの福祉を害するような特段の事情としては、具体的には以下の事情がある場合などが考えられています。

子どもの福祉を害する特段の事情の具体例
  1. 子どもが非監護親によって奪取される危険性がある場合
  2. 非監護親が子どもを身体的、精神的又は性的に虐待していた場合
  3. 非監護親が監護親に対して暴力を振るっていた場合

以上のような事情がなければ、原則として、面会交流は実施しなければならないと考えられます。

なお、子どもが幼いなどで子どもの心身に悪影響を及ぼす可能性が高い場合にも面会交流が制限される場合があります。

 

 

養育費の支払い義務

養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。

そして、面会交流は非監護親が監護親に対して求めていく権利であるのに対して、養育費は親権者が非親権者に対し求めていく権利です。

養育費と面会交流は、離婚後に交差的に請求権が発生するため、養育費の問題と面会交流の問題が複雑に絡み合うこともしばしばです。

 

 

養育費と面会交流の関係

上記のとおり、面会交流は非親権者が親権者に対して求めていく権利であるのに対して、養育費は親権者から非親権者に対して求めていく権利です。

面会交流と養育費が交差的な関係にあるため、これらの問題を表裏一体と考える方も多いのですが、法律上は別個の問題であり、たとえば、「養育費を支払わないのであれば、面会交流をさせない」などの主張は、基本的には認められません。

面会交流は子どもを監護していない父又は母にとっての権利ということだけでなく、子どもの健全な成長にとって非常に重要だと考えられています。

そのため、面会交流は子どもの福祉のために行わなければならないと理解されています。

したがって、面会交流の問題と養育費の問題はそれぞれ別個の問題として、それぞれ適切に解決することが望ましいといえます。

なお、養育費が支払われていない場合には、まずは請求の意思を明確にしておくということが重要です。

 

 

対応のポイント

相手方が養育費を支払っていない場合であっても、相手方が面会交流を求めてきた場合で、特に面会交流を制限すべき事情がない場合には、面会交流を実施する方向で考えるべきでしょう。

もっとも、養育費も面会交流と同様に子供にとって重要です。

そこで、相手方が養育費を支払わない場合、次の対応を検討されると良いかと考えます。

 

POINT①養育費の請求の意思を明確にする

相手方の養育費の不払いに対し、権利者として不満があるということを明確にするために、養育費を支払うよう書面で請求するという対応が考えられます。

当事務所では、養育費の支払通知書のサンプルをホームページ上に掲載しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。

なお、離婚協議書等を作成していない(養育費の確定的な合意が形成されていない)事案の場合、弁護士を通じて内容証明郵便という方法で支払通知を出してもらうことをお勧めいたします。

請求の意思を明示しておくことで、書面が届いた時点に遡って養育費を支払ってもらうように請求できる可能性があるからです。

 

POINT②調停では面会交流を制限する理由を具体的に主張する

相談者が面会交流を拒否した場合についてですが、その場合、相手方がまず初めに採りうる法的な手段は、面会交流調停の申立てです。

面会交流調停では、面会交流を実施すべきか否か(面会交流を制限すべき事情の有無)、実施するとしてどのような条件・配慮を行うべきか等が話し合われます。

そして、その際には、面会交流を制限すべき事情がある場合には、これらの事情をしっかりと主張することが重要です。

その際には、上述した具体例に当てはまる事情を具体的に主張されると良いでしょう。

また、状況に応じて家裁では調査官による調査が実施されます。

調査が始まると、具体的な説明が求められるはずですので、しっかりと主張することが必要となります。

 

POINT③養育費の請求調停を申し立てる

相手方が面会交流の調停を申し立ててきた場合、反対に、養育費の請求調停を申し立てる方法が考えられます。

その際、同一管轄であれば、養育費の未払いの問題と面会交流の問題を併合する形で、あわせて協議することが可能です。

裁判所に対し、面会交流調停と養育費支払請求調停の併合を上申すれば、通常は同一手続での協議が認められます。

 

 

まとめ

以上、養育費の支払と面会交流の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

相手方が養育費を支払わない場合でも、当然に面会交流を拒否することは難しいといえます。

しかし、その他に面会交流を拒否できる正当な理由があれば面会交流の制限が可能となります。

相手方が養育費を支払ってくれない場合、請求の意思を明示することが重要です。

また、相手方が調停を申し立ててきた場合、面会交流を拒否する理由をきちんと説明し、反対に養育費の請求調停を申し立てることを検討するとよいでしょう。

面会交流や養育費の問題は、子供の将来のためにとても重要です。

そのため、離婚問題を専門とする弁護士に相談されることをお勧めいたします。

この記事が離婚問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。

 

 

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