財産分与の基準時とは?【弁護士が事例で解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

財産分与の基準時は、別居日を一応の基準時としつつ、公平の観点から事情に応じて裁判時または離婚時までの財産変動を考慮する場合が多いと考えます。

 

財産分与について質問です。

財産分与においては、別居時が基準になると聞いたことがあります。

ただ、私の場合には、平成20年8月末頃から別居しており、平成20年9月下旬には一度、離婚調停も経験しています(ただし、不成立に終わりました。)。

一方で、離婚調停中も、しばらくの間は、家計は同一にしており、完全に家計が別になったのは、別居から1年以上が経過した平成21年8月末です。

私の場合、財産分与の基準時は、平成20年8月末と平成21年8月末のどちらになるのでしょうか?

 

 

財産分与とは

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

基本的には、離婚する前に取り決めることになります。

離婚後でも請求することは可能ですが、期間制限(原則として2年間)がありますので注意が必要です。

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財産分与について

 

 

財産分与の基準日について

財産分与の問題をインターネットや文献等で少し調べてみると、「財産分与の基準日は、別居時です。」という話はよく耳にするのではないでしょうか。

しかし、財産分与の基準日が別居時ではないケースもあります。

そこで、この記事では、「財産分与の基準日が別居時」というのはどういうことなのかというところを掘り下げて解説してみたいと思います。

財産分与の基準日は別居時?

そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を対象とします。

したがって、財産分与の基準時は、夫婦間において相互の財産形成に対する協力関係が終了した時期というのが正確な理解になります。

では、いつが夫婦間における相互の財産形成に対する協力関係が終了した時期といえるのでしょうか?

それが、一般的には、別居時であることが多いため、財産分与の基準日=別居時とされることが多いのです。

しかしながら、財産形成過程における夫婦の協力態勢は、財産の種類や夫婦の具体的関係によっても様々ですから、特定の時点を基準として、一律にその範囲を確定することは困難です。

そこで、訴訟実務においては、明確性及び客観性の観点から、別居日を一応の基準としつつ、公平の観点から事情に応じて裁判時または離婚時までの財産変動を考慮する場合が多いように思います。

例えば、別居後に夫婦の一方が新たに形成した財産については、当該財産形成に対する他方配偶者の協力がなお継続していたと認められる特段の事情がない限り、分与対象財産には含まれないと考えられています。

他方で、別居後も妻が夫の給与を管理する等して、別居後も別居前と経済生活に変化がない場合には、夫婦の経済生活では協力関係が評価され、別居日と分与対象財産の基準時が異なりうるということになります。

 

調停や訴訟になった場合

実務上、例えば、夫が専業主婦の妻に対して離婚を申し入れる場合、妻に収入源がないことから、温情の意味で、離婚協議を行っている数ヶ月の間は現在の状態を維持(妻が管理する夫名義の給与口座の変更等を行わない)するということはよくあります。

この場合、離婚協議が合意に至らず、調停や訴訟になったとします。

その際に、財産分与の基準日が、別居日なのか給与口座の変更を行ったときなのかが争いになりうるのです。

そこで、このような争いを避けるためにも、このような場合には、きちんと弁護士からの書面等で
「本件は、離婚協議を行っている期間の猶予措置であり、離婚協議が破断になった場合には、速やかに給与口座の変更を行います。財産分与の基準日は、飽くまでも、別居時と当方は考えておりますので、念の為申し添えます。」等を主張しておくことが大切になるでしょう。

 

 

まとめ

以上、財産分与の基準日について、事例形式で解説しましたがいかがだったでしょうか。

財産分与の基準時は、多くのケースでは別居日と考えられています。

しかし、別居日のすることが不合理な場合、これをずらすことができる可能性もあります。

財産分与は、もらう側にとっても、支払う側にとっても、経済的な影響が大きいと予想されるため、財産分与についてお悩みの方は、専門の弁護士にご相談されることお勧めいたします。

この記事が離婚の問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。

 

 

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