他の子どもの認知を理由に婚姻費用の減額に応じる必要はある?
夫とは現在別居中です。
調停で決まった婚姻費用をもらっているのですが、夫が「他の女性との子どもを認知したから婚姻費用の減額に応じてくれ」と言ってきました。
あまりにも身勝手な主張だと思うのですが、婚姻費用を減額する必要があるのでしょうか?
不貞相手との間に子どもができて認知したことも婚姻費用の減額事由となる(婚姻費用の減額は認められる)、いうのが裁判例です。
そのため、調停になった場合には婚姻費用を減額される可能性が十分にあります。
婚姻費用の減額が認められる場合とは
一度調停や協議で決めた婚姻費用を減額するためには、その決めた後に生じた「事情の変更」が必要とされています。
事情の変更とは、倒産やリストラによって勤務先を退職したり、病気で仕事ができなくなった場合、逆にまたは専業主婦だった妻が働きだしはじめてかなりの給与をもらっている場合など、夫婦の収入が変動した場合が典型例として挙げられます。
婚姻費用は生活費なので、これを算出するにあたっては、夫婦の収入や扶養している子の人数などが考慮されています。
これらが変化した場合には、事情変更にあたり婚姻費用の増減の事由となるのです。
したがって、今回のように新しい子どもができて、扶養すべき者が増えた場合にも婚姻費用の減額事由になるとされています。
不貞相手の子どもに対する扶養義務
離婚が成立する前の別居中に他の女性と子どもをもうけた場合には、不貞相手の子どもということになりますから、なぜ不貞をしたにも関わらず婚姻費用が減らされるのかと疑問に思うかもしれません。
しかし、不貞相手の子どもであろうと、認知した場合にはその子どもに対して扶養義務を負うというのが裁判例です(東京家審昭和44年1月27日)。
そして、子どもに対する扶養義務がある以上、扶養のためのお金がかかるので、その分を考慮して婚姻費用を決めるのは、認知された子どものためにも必要なことなのです。
不貞をしていたことは許されないことかもしれませんが、そのことと、生まれてきた子どもは別の話ですので、この2つのことは切り離して考える必要があります。
信義則に反する?
不貞相手の子どもに対する扶養義務を主張して、婚姻費用の減額を求めることは、審議信義誠実の原則に反するのではないかとも思えます。
つまり、自分で不貞をしておいて、その結果子どもができたために婚姻費用の減額ことを主張するのは身勝手で、不当だから認めるべきではないだろうということです。
しかし、上述のように、子どもに対する扶養義務は不貞行為とは切り離して考えなければならないことです。
不貞行為によって生まれてきた子であっても、子供には責任はなく、婚姻中に生まれた子と等しく扶養を受ける権利を有すると考えます。
名古屋高決平成28年2月19日でも、不貞相手の子どもを認知したことを婚姻費用減額の事由として主張することが信義に反するとした原審判を取消し、減額事由として認めているので、裁判所も同じこのような考えだと言えます。
では、不貞をされた上、婚姻費用の減額までされて踏んだり蹴ったりの状態の妻は、ただ我慢することになるのでしょうか?
婚姻費用の点では、減額事由となることを覆すのは難しいと言えます。
しかし、不貞をしており、子どもまで設けたことは不貞に対する慰謝料請求の増額事由となりえます。
そのため、婚姻費用が減額した分については、夫や不貞相手に慰謝料請求することで取り戻すことになります。
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