面会交流で直接会わせない方法はありますか?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

面会交流について

私と夫は、数年前に別居しました。

別居の際には、私が子ども(現在11歳)を連れて出て行きました。

現在、夫と離婚協議中ですが、夫が子どもと会わせてほしいと強く言ってきています。

しかし、夫との同居期間中、夫は度々子どもに暴言を浴びせていました。時には手を出したこともありました。

そのため、子どもは夫のことをとても怖がっていて、しばらくは会いたくないと言っています。

私も子どもの心のケアが必要だと思いますので、当面は子どもの意思を尊重して、直接会わせることはしたくありません。

このような場合にも、すぐに子どもと夫を会わせなければならないのでしょうか。

 

 

弁護士の回答

本事案については、すぐに直接的な面会交流を行うのではなく、当面は間接的な形で面会交流を行うことを目標に面会交流の調整をすべきであると考えます。

 

面会交流は誰のためにするの?

面会交流とは、非監護親(子どもを監護養育していない親)が、子どもと直接会ったり(面会)、面会以外の方法で意思疎通を図ったり(交流)することをいいます。

面会交流については、面会交流は誰のために行われるものか、しばしばその法的性質が問題になることがあります。

この点、様々な見解がありますが、実務的には、面会交流は、面会交流を求める請求権ではなく、子どもの監護養育のために適正な措置を求める権利であるとされています。

 

 

面会交流の方法は?

直接的な面会交流

面会交流の方法については、子どもと直接会う「面会」(直接的な面会交流)を求める人がほとんどであり、裁判所も特別な事情がない限りは直接的な面会交流の実施を前提に調整をしていくことが多いです。

面会交流でよくなされる取決方法は以下のとおりです。

  • 月〇回 〇時間程度
  • 具体的な実施方法等については、当事者同士で協議する。

もっとも、上記事例のように、何らかの事情で直接会うことができない(もしくは著しく困難)場合に、無理をして直接的な面会交流を実施することは、子どもにとって大きな精神的負担となるため、子の利益(福祉)に反することです。

このような場合には、当面、面会以外の方法で意思疎通を図る「交流」(間接的な面会交流)を目標に面会交流の調整をしていくべきでしょう。

直接的な面会交流の合意条項例については離婚協議書の書き方サンプルをご覧ください。

 

間接的な面会交流

間接的な面会交流については、以下のような方法があります。

  • 手紙のやり取り(もしくは、一方から他方への送付のみ)
  • メールのやり取り(もしくは、一方から他方への送信のみ)
  • 写真の送付(学校行事・部活動等の様子を写したもの、集合写真等)
  • プレゼント(誕生日、クリスマス等)の送付
  • その他の方法(通知表の送付、育児アプリの共有、ブログの活用等)

こうした方法は、非監護親と子どもが直接会うわけではないため、子どもの精神的負担は少ないものといえるでしょう。

なお、間接的な面会交流を実施する方向で進めていくにあたっては、子どもの意向をしっかりと確認し(本当に会いたがっていないのか)、間接的な方法によるとして、どのような方法であれば、子どもの精神的負担が少なくなるのかを慎重に検討していく必要があります。

また、直接的面会交流について協議する時期を決めるか等も話合う必要があるでしょう。

 

 

面会交流は絶対にやらなければならないの?

実務上、面会交流については、明らかに子どもの福祉(利益)を害しない限り認められるべきとの判断基準が取られています。

そのため、面会交流については、原則として実施すべきであり、明らかに子どもの福祉を害する特別な事情がある場合に限り、例外的に面会交流を制限できると考えた方がよいでしょう。

面会交流を制限し得るのは、例えば次のような事情がある場合です。

  • 子どもが奪取される危険性がある
  • 非監護親が子どもを身体的、精神的又は性的に虐待していた
  • 非監護親が監護親に対して暴力を振るっていた

ただし、実務上、これらの事情に該当するか否かは厳格に判断されることが多いです。

また、これらの事情に該当するとしても、その程度によっては面会交流を制限すべきとまで判断してもらえない可能性もあります。

そのため、本事例のように、夫が子どもに対して手をあげたことがあるケースでも、面会交流を制限できるとの判断をもらえないことも十分に考えられます。

なお、本事例においては、夫と子どもとを直接会わせることはしたくないものの面会交流自体を制限すべきとのお考えではないため、当面は間接的な面会交流にすることで子どもの精神的負担を減らすべきとの主張をしていくとよいでしょう。

 

 

まとめ

面会交流は、当事者の感情的対立が激化しやすいため、解決困難な問題の1つといえます。

また、面会交流の実施が離婚条件全体に影響を与えることも少なくありません。

そのため、面会交流で争いになる可能性がある場合には、紛争が激化する前に弁護士に相談する等して冷静に対応をしていくことをお勧めいたします。

 

 

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