妻が不倫し家出。婚姻費用を支払わなければならないのですか?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

家出妻が不倫していたのですが、不倫をとがめたところ、子どもを連れて家を出ていきました。

その後、妻から婚姻費用を支払えと言われました。

不倫をして勝手に出ていったにも関わらず、婚姻費用を支払わなければならないのでしょうか。

 

 

 

弁護士入野田智也イラスト有責配偶者であっても、婚姻費用を請求する権利がなくなるわけではないので、婚姻費用の支払いをする必要はあります。

ただし、その額について、配偶者の生活費にあたる部分については支払い義務がなく、子ども養育費にあたる部分のみの支払で足りる可能性はあります。

 

有責配偶者からの婚姻費用の請求

婚姻費用の算定方法

計算まず、婚姻費用の算定は、夫婦の収入に基づいて算定されます。

算定にあたっては、実務上、裁判所の公表している簡易算定表によることがほとんどです。

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有責配偶者からの婚姻費用の請求

生活費婚姻費用を請求する権利というのは、夫婦の扶養義務や親子の扶養義務によるものですから、婚姻をしている限り、相談者は妻への婚姻費用の支払いを免れないのが原則です。

つまり、婚姻費用というのは、妻に対する扶養の面と、子どもに対する扶養の面を持ち合わせているのです。

しかし、不倫をして勝手に出ていった妻に婚姻費用を支払わなければならないというのは納得がいかない方も多いかと思います。

この点、平成28年3月17日大阪高等裁判所の決定は、不貞行為を行った有責配偶者からの婚姻費用分担請求について、子どもの養育費相当部分に限って、妻からの請求を認めました(妻の相当部分については信義則ないし権利濫用の見地から請求を認めないとしました)。

判決要約すると、この裁判例は、
① 妻Aは不貞をしていた者であり主として又は専ら責任があるので、妻Aに対する扶養に相当する部分については、扶養を求めることはできない。
② 子どもの扶養に関する部分についてはAの不貞とは無関係なので、養育費に相当する部分は請求を認める。
と述べているわけです。

 

裁判例の留意点

この裁判例以外にも有責配偶者の婚姻費用分担請求について同様の判断をした裁判例があります。

しかし、下記の点には留意が必要です。

責任の程度や双方の責任を考慮する

上記判例も判示している点ですが、不倫≠婚姻費用分担請求できない又は減額という点に留意が必要です。

婚姻費用の分担を求められないほどの責任があるかどうかは、別居をした原因が「主に又は専ら婚姻費用分担を請求する側にあるか」ということになります。

責任が軽い場合や、夫婦双方に責任があると認められる場合などは、不倫があったとしても、婚姻費用の支払義務は免れないでしょう。

不倫を証明できるかどうかの問題

浮気もう一つの問題としては、そもそも不倫(ないし責任)を証明できるかという点です。

裁判所は、証拠がなければ不倫(不貞行為)を認定し、有責配偶者と認めてはくれません。

そのため、相手の不倫等の責任を証明できる証拠を集める必要があります。

証拠収集については、こちら不倫(不貞行為)の証拠の集め方をご覧ください。

婚姻費用の算定や減額などが議論されることは少なくありませんが、一度婚姻費用を定めている場合には、その婚姻費用を定めた趣旨や婚姻費用を定めた当時に想定できない事情の変更があったのかなど、様々なことを考慮して判断することになります。

当事務所では、多数の離婚事件を扱っており、婚姻費用についても適切な見通しを立てることができますので、一度気軽にご相談ください。

 

 

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