面会交流を制限することはできますか?
元夫と私は、感情的な対立が深く、正直、子どもと面会交流させたくありません。
このような場合、面会交流を制限することはできるでしょうか?
原則、面会交流の制限は難しいですが、子が幼い等で子の心身に悪影響を及ぼす可能性が高い場合には制限が可能なことがあります。
この問題について、面会交流に詳しい弁護士が解説いたします。
本件は、面会交流とその制限に関する以下の5つの要素のうち、「監護親に関する要素」が問題となる事案です。
- 子に関する要素(子の意思、子の年齢、子の心身に及ぼす影響、子の生活環境に及ぼす影響等)
- 監護親に関する要素(監護親の意思、監護親の監護養育への影響、監護親の生活状況など)
- 非監護親に関する要素(非監護親の生活状況、非監護親に問題がある場合など)
- 子と非監護親の関係に関する要素
- 監護親と非監護親との関係に関する要素(別居・離婚に至った経緯を含め、現在の両親の関係がどうであるかなど)
一見、事例の場合に面会交流の制限を認めると、ともすれば監護親の恣意的な判断で面会交流の制限が可能かのように思えてしまいます。
そのため、誤解が生じないよう慎重に考える必要があります。
本記事を読まれている方も、監護親の恣意的な意思で面会交流の制限が可能なんだという誤解を抱かないように、お願いいたします。
面会交流の制限を認めた裁判例
監護親の意思を重要な判断要素として、面会交流の制限を認めた裁判例(東京高裁平成2年2月19日決定)をご紹介します。
判例 東京高裁平成2年2月19日決定
この決定では、「幼齢の子を相手方(父)と面接させるには、現に子を監護する抗告人(母)が協力することが不可欠であるが、それを期待することは困難である。したがって、その面接は子の精神的安定に多大の悪影響を及ぼすものとみるべきであり、子の福祉を損なうおそれが強いと判断される。そうであれば、現時点の面接は子の福祉をはかるために、これを許さないことを相当とする余地があり、仮に面接を許すとしても、子の福祉を極力損なうことがないようにするため家庭裁判所調査官等を関与させる等の配慮が必要である」としました。
ロジックとしては、
- 親同士の感情的対立が深い
- 監護親は非監護親に面会交流させたくないという意思が強い
- となると、面会交流に監護親を協力させることは困難
- そうすると、板挟みになる子の精神的安定に悪影響
- ひいては、子の福祉に反する
- よって、面会交流の制限はやむなしというものです。
この裁判例のロジックを前提にすれば、子の年齢も重要なファクターになります。
というのも、面会交流に監護親の協力が不要な年齢になれば、この裁判例のロジックは成り立たないからです。
実際、別の裁判例において、横浜家裁平成8年4月30日審判は、「子の年齢等から子が単独で非監護親と面会することが可能であるときは、監護親が反対であっても原則として面会交流を認めることができる」という旨を示しています。
これを踏まえて、まとめると、
監護親の意思によって、面会交流を制限できる場合も確かにあるが、それは監護親の協力が面会交流に不可欠でありそのため面会交流が子の福祉に反するというロジックが成立する場合に限られる。
ということになるでしょう。
より詳しくは、面会交流の問題に詳しい当事務所の弁護士にご相談ください。
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