特有財産とは?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

この記事でわかること

  • 特有財産の意味
  • 特有財産に該当する場合
  • 立証責任と立証方法
  • 特有財産に関するよくあるQAなど

 

弁護士の回答

特有財産とは、財産分与の対象とはならない財産のことを言います。

以下、特有財産について、詳しく解説します。

 

特有財産(とくゆうざいさん)とは

離婚のとき、財産分与の対象となるのは、結婚中の夫婦の協力によって形成された財産です。

したがって、結婚前に取得していた財産や結婚後であっても第三者(親など)から無償で取得(相続・贈与)した財産は、財産分与の対象とはなりません。

 

特有財産についての参考判例

「夫婦の一方が相続によって得た財産は、夫婦の協力によつて取得されたものでないから、夫婦が婚姻中に取得した他の財産と同一視して、分与の対象物件に含ませることは、特段の事由がない限り、許されないというべきである。」(高松高裁昭和63年10月28日)

このような財産分与の対象とすべきでない財産を特有財産(個人財産)といいます。

特有財産であることが認められると、その財産は財産分与の対象から外れます。

したがって、特有財産であるか否かは、離婚財産分与において、重要な意味を持ちます。

このページでは、特有財産について、ご相談が多い問題点について、わかりやすく詳しく解説いたします。

 

 

特有財産を証明できないとどうなる?

①立証責任とは

立証責任とは、裁判において、主要事実の真偽が不明な場合に、その事実を要件とする法理効果が認められない一方当事者の不利益をいうと定義されます。

財産分与については、基本的には、「基準日において財産分与の対象財産が存在することについて、存在すると主張する方が立証責任を負う」と考えられています(参考判例:福岡高裁平成30年11月19日など)。

したがって、離婚の財産分与においては、財産分与を求める側が、基準時(通常は別居時)に財産分与の対象となる財産が存在することを証明しなければなりません。

具体例

別居時に、夫名義の預金口座に1000万円があり、これが財産分与の対象となるとして、その2分の1である500万円を請求する場合この場合、夫側が預貯金の存在を否定すれば、妻が「別居時に夫名義の口座に1000万円が存在したこと」を立証しなければなりません。

 

②特有財産を主張する場合

では、上記の例で、夫が特有財産であることを主張する場合、その立証責任をどちらが負うのでしょうか。

具体例

結婚時(5年前)に既に預貯金700万円が存在する場合

このとき、夫は結婚後貯めたお金は300万円であるから、財産分与すべきは150万円である、と主張することになりますが、「結婚時点で預貯金700万円が存在したこと」を夫が立証すべきか、それとも妻が「結婚時点では預貯金が存在していなかったこと」を立証すべきかが問題となります。

様々な考え方がありますが、この場合は、特有財産であることを主張する夫に立証責任があると考えるべきでしょう。

民法は、夫婦のいずれかに属するかが不明な財産は、共有財産と推定すると規定しています(第762条2項)

根拠条文

(夫婦間における財産の帰属)

第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

引用元:民法|電子政府の窓口

また、妻側に「結婚時点では預貯金が存在していなかったこと」について立証責任を負わせることは、不可能を強いるようなものです。

すなわち、存在「しない」ことを立証するのはあらゆる可能性を排除しなければならなくなるため、悪魔の証明と言われています。

他方で、夫側は、5年前の口座情報を金融機関から取り寄せれば簡単に立証できます。

したがって、特有財産を主張する夫側に立証責任があると考えるべきでしょう。

 

 

特有財産の立証方法

特有財産を主張し、それを相手が否認する場合、立証方法が問題となります。

下表は、問題となりやすい財産別の立証方法を一覧表にしたものです。

対象財産 立証すべき内容 立証方法の例
預貯金 独身時代の預貯金 結婚した日時の口座の取引履歴又は残高証明
第三者からの贈与 贈与契約書
贈与時の口座の取引歴又は残高証明
遺産として取得したもの 遺産分割協議書又は遺言書
不動産 独身時代に取得したもの 登記事項証明書、売買契約書など
遺産として取得したもの 登記事項証明書、遺産分割協議書又は遺言書
株式 独身時代に取得したもの 証券や契約書など
遺産として取得したもの 遺産分割協議書又は遺言書
退職金 結婚前の就労期間に対応する退職金 退職金規程、入社年月日がわかる資料(雇用契約書等)
保険 独身時代からかけていた部分 保険証券(加入年月日が記載)
第三者が保険料を支払っていた 保険証券(保険契約者や受取人が記載)、通帳(第三者から保険金を送金してもらっていた場合)
自動車 独身時代に取得したもの 車検証
遺産として取得したもの 遺産分割協議書又は遺言書

※あくまで一例であって参考程度にしてください。

 

 

特有財産が混在しているケース

結婚生活が長くなると、夫婦の共有財産と特有財産が混在し、明確に区別できなくなる場合があります。

特に、普通預金口座については、入出金が頻繁になされることが通常です。

その中に、両親から贈与を受けたものや相続によって取得したお金が入金されることもあります。

このような場合、婚姻時の預貯金を基準時の預貯金と完全に分離するという判断は難しくなります。

 

参考判例

裁判手続きで問題になったケースでは、特に別の口座を利用していたということもなく、長期間同居し、金銭が独身時代と渾然一体となっていたという状況下において、同居期間中の収入により、(独身時代の預貯金の減少分が)補填されていたと考えることができるため、独身時代の残高を控除するのは相当ではない判断されたものもあります。

参考:ケーススタディ財産分与の実務83頁

執筆者の経験上、結婚期間が5年以上のケースにおいては、預貯金について、結婚前のものであっても、特有性が失われるという見解を持つ裁判官もいるので注意が必要です。

 

 

使い込みが発覚するケース

預貯金の問題では、相手の使い込み(浪費)が問題となるケースが多くあります。

この場合、浪費した分をどうするかが問題となります。

具体例

上記の例で、基準時の夫の口座に1000万円があったところ、夫が100万円を浪費したとします。

この場合、当該100万円については、夫が浪費していなければ、財産分与の対象となったのですから、100万円を合算して、財産分与を行うのが合理的と考えられます。

したがって、妻は夫に対して、550万円を請求できます。

(1000万円 + 100万円)× 1/2 = 550万円

なお、使い込んだものが特有財産であれば、そもそも財産分与の対象ではないため、基本的に財産分与に影響はしません。

 

 

特有財産を生活費の算定に考慮すべき?

例えば、特有財産(相続を受けた不動産など)の賃料収入がある場合、これを別居中の生活費(婚姻費用といいます。)を算定する上での基礎収入に含めるべきか、というご相談があります。

この点については、特有財産からの果実(賃料収入など)であったとしても、夫婦の所得である以上、婚姻費用の根拠(生活保持義務)からすれば、基礎収入に含まれる可能性があると考えられます。

もっとも、裁判所の判断も分かれるところであり、状況によっては基礎収入に含まれないケースも考えられます。

 

 

参考判例

東京高裁昭和42年5月23日:基礎収入に含めた判例
妻の特有財産の収入が原則として分担額決定の資料とすべきではないという理由または慣行はない。
東京高裁昭和57年7月26日:基礎収入に含めなかった判例
夫が相続により取得した高額の財産(不動産)及びその賃料収入については夫婦の同居中から共同生活の資とされていなかつたため、別居後の婚姻費用の分担額を算定するに当たっても、夫が右財産を所有し、またこれにより相当多額の公租公課を負担していることをいずれも考慮せず、夫の給与所得のみに基づきその分担額を決定した原審判を相当として維持した事例

 

 

住宅ローンの頭金を個人の財産から支払った場合は特有財産となるか?

自宅の頭金が婚姻前に有していた財産や、親から贈与を受けた財産で支払われている場合、特有財産として扱われ、財産分与の対象外となる可能性があります(東京高裁平成10年2月26日など)。

この問題については、複雑ですので、具体例をもとにくわしく解説しています。

 

 

小遣いは特有財産となるか?

結婚後に第三者から贈与を受けた金銭は、基本的には特有財産となり、財産分与の対象から外れます。

これは、第三者からの贈与は、夫婦の共同生活と直接の関係がないからです。

夫婦の毎月の小遣いは、夫婦の収入が原資となっており、夫婦の共同生活と直接関係します。

したがって、小遣いについては、基本的には特有財産と認められないと考えられます。

 

まとめ以上、特有財産について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

結婚前に取得していた財産や結婚後であっても第三者(親など)から無償で取得(相続・贈与)した財産は、財産分与の対象とはなりません。

特有財産の立証については、基本的にはその特有性を主張する側にあると考えられますが、問題となる財産によって立証方法が異なります。

また、特有財産となるか否かについては、微妙なケースも多く、裁判例も分かれることがあります。

これらについて、適切に判断するには財産分与に関する高度な専門知識と経験が必要となります。

そのため、詳しくは離婚専門の弁護士へ相談されることをお勧めします。

この記事が特有財産でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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