精神病の夫・妻と離婚するには?【弁護士が事例で解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相手が重度の精神病の場合、事実上離婚協議ができません。

また、訴訟能力がないため、まずは成年後見人を申し立てる必要があります。

さらに、生活保護の申請などが必要となるケースもあります。

以下、実際の事例をもとに、詳しく解説します。

ご相談者Kさん (福岡市西区)
職業:無職(年金)
世帯年収:180万円
婚姻期間:24年
解決方法:裁判
子どもなし
離婚を切り出した

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 ×不成立 ○成立
財産分与 300万円 100万円 約200万円

状況

Kさんは、障害を持っており、弟夫婦に引き取られ、現在は年金暮らしをしています(年収180万円)。

Kさんは、妻と24年前に結婚しましたが、子どもはいませんでした。

妻は婚姻前に精神病を発病しましたが、当時は軽い症状でした。

しかし、婚姻後2年ほどしてから妻に幻聴等の症状が現れ、重症化していきました。

そして、妻は夫を自分の夫と認めず、家出し、他人の自宅へ押しかける等の異常行動があったため、精神病院へ強制入院となりました。

入院から2年後に退院しましたが、それ以降も夜中にマンション内を徘徊するなどの異常行動が見られました。

そして、妻は自宅で眠っていたKさんをいきなり蹴り上げ、「お前は誰や!」などの暴言を吐くようになりました。

そして、日常的に深夜暴れるようになり、再度精神病院に入院となりました。

1年前、Kさんが脳血管疾患によりマンションの室内で倒れましたが、妻は救急車を呼ばずに放置しました。

住民がKさんを訪ねてきましたが、それでも妻は「夫は外出していない。」などと嘘を告げました。

数日後、Kさんを心配した会社の同僚が近隣住民とともに自宅のドアをこじ開け、Kさんを発見し、病院へ搬送したため一命を取り留めました。

妻は再び精神病院へ入院し、現在も入院しています。

主治医の診断によれば、妻は幻覚妄想に支配され、現実検討能力はまったくなく、夫のことを「私の夫ではない。」などと言い続け、夫の存在を否定しています。

Kさんは、長年月にわたり、妻から罵倒され、夫としての存在すら否定されながらも介護し続けましたが、自らも病に倒れ、妻の療養費を負担し続けていくこともできず、弁護士に離婚を相談しました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、まず、妻に対する成年後見の審判を申し立てました。

そして、成年後見人として、弁護士を選任してもらい、その弁護士を被告として離婚訴訟を提起しました。

また、同時に、妻の今後の生活のために、妻の生活保護を申し立てました。

妻の生活保護受給が認められ、今後の生活について、具体的な検討ができたことから、被告と和解離婚が成立しました。

 

補足

このケースでは、妻が重度の精神病を患っていることから、まず、協議離婚が不可能でした。

また、訴訟を提起しようにも、訴訟能力が認められません。

被告とするには一定程度の判断能力が必要なるからです。

そこで、家庭裁判所へ成年後見の審判を申し立て、他の弁護士を成年後見人として選任してもらいました。

この弁護士は各地の弁護士会等の推薦により家庭裁判所が選任します。このようにすれば、その弁護士を被告として、離婚訴訟を提起できます。

次に、このようなケースでは、裁判所が離婚を認めない可能性もあります。

すなわち、法律上は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当し、離婚が認められるかのように思えます(民法770条1項4号)。

しかし、精神病者に対する離婚訴訟において、「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許されない」という裁判例があります(最判昭33.7.25)。

また、Kさんとしても、今後の妻の生活を心配されていました。

そこで、妻の生活保護受給を同時に申立てました。

こうすることで、妻は今後、医療給付を無償で受けることができ、生活に困ることはありません。

こうして、今後の生活についても安心できるという状況を作り、被告弁護士と和解離婚を成立させました。

 

 





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